2004年の業務日誌1

セミナーはピンポイントで

 テープ起こしとデータ入力では、必要なスキルや仕事の捉え方は違う。ベタ入力とデータ入力でさえ、実は違う。

 SOHO・在宅ワークセミナーの講師に何度か呼んでもらって、だんだんわかってきたことがある。セミナーはピンポイントでなければ効果的ではない、ということだ。
 現状のSOHO・在宅ワークセミナーは、テープ起こし者と入力者どころではない、もっと広い範囲の職業を対象にしている。家でできるなら何でもSOHO・在宅ワークというわけだ。

 極端なことを言えば、弁護士と華道の師匠が、独立自営だからと同じセミナーに出席するようなものだ。そこで講師が言えることといったら「人間関係は大切です」などという、そりゃまあそうだけど、の内容になってしまう。
 どう考えても、必要な知識や技術や心構えは違うのだ。「人間関係は大切」などという基本以外は。

 ピンポイントにしたら、大都市圏以外は出席者が集まらないだろう。だから家でできる仕事なら何でも一緒にというのもわからなくはない。

 それならそれで、セミナーの内容を絞るという手がある。経理的な知識の話に絞る、などだ。
 それでさえ、かたや夫の扶養の範囲を越えないテクニック、かたや法人化するためのノウハウと、参加者の立場によって、役立つ話は全然違う。
 本当に役立つのは「夫の扶養内でウハウハ稼げる秘密のテクニック」とか「たった○万円・○日でできるNPO法人設立」などという、個別のケースに絞った内容なのだ。

 そう考えていくと、しかるべき参加者数が読めて、しかも参加者に役立つSOHO・在宅ワークセミナーというのは、実にむずかしい。

(2004年08月24日)

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まず学校の勉強を着実に

 夫はクリーニング屋。あるとき、お客さんに品物を届けておいてくれ、と夫に言われた。小4の長女に「これ、○階の○さんに届けてくれない?」と頼んだら、「いいよ」と立ち上がった。配達初挑戦だ。

「あ、待って。お金もらって来なきゃならないの。660円」
「えっ? うん」
「1000円札出されたら、お釣りはいくらかわかる?」
「ええっ? えっとー」
「1060円出されたら?」
「ええっ」
「5000円札だったら? 1万円札だったら? いいわ、やっぱりお母さんが行くよ」
「…うん」

 学校の勉強は大切なのだった。そのことにあらためて私は気づいた。店では電卓も使えるが、配達に行ったら相手の家の玄関先で暗算をしなければならない。
 単調な計算ドリルも必要なのだ。速く、正確に計算する能力は、いわゆる「考える力」とはまた少し別だ。

 お金の受け渡しに限らない。
 「以外」と「意外」の使い分け、「お話をする」と「お話しする」の送りがなの使い分けなどは、テープ起こしをする人は当然できなければならない。国語の時間に習ったはずなのに、身につかなかったのか、忘れてしまったのか。
 テープ起こしを志したとき、そこから勉強し直す必要のある人と、そこは身についていてその先の勉強を開始できる人では、たちまち知識量が違ってしまう。
 (私は漢字はまあまあだが、英語が全滅だ。私の生活に英語なんか必要なはずがないと思って、ろくに勉強しなかったのが失敗だった…)

(2004年06月17日)

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「数をこなすだけ」から踏み出そう

 正社員でもゆっくり研修を受けられない現在では、まして在宅ワーカーを本気で仕込んでくれる会社を見つけるのはむずかしい。
 家で仕事をする人間には「隣のデスクの同僚」がいないので、仕事を見て覚えることができない。だから、本当は最も研修が必要なのだが…。

 在宅ワーカーとして成功(?)するのは、「一を聞いて十を知る」タイプの人かもしれない。手取り足取りの指導が受けられず、見て覚えることもできないのだから。

 在宅ワーカーに見えるのは、仕事の流れのごくわずかな部分にすぎない。自分の納品したデータが、そのあとどう使われるのか、どう加工されるのか、そのために求められているポイントは何なのか。
 「そのあと」については教えてくれない発注者が多い。在宅ワーカー一人ひとりに個別にレクチャーしていたら自分の時間がなくなるからでもあるだろうし、発注者自身が下請けで、その後のことを知らない場合もあるだろう。
 ごくまれに、運良く一言でも何か情報を聞けたら、それを何度も考え、想像し、理解していく。その努力をするかどうかで、在宅ワーカーが「先」へ進めるかどうかが決まるのかもしれない。

 自分に与えられた仕事(たとえば文字を正確に入力する)だけに必死になっているのでは、その仕事しかやってこない。つまり世の中で最も安い仕事、身体を酷使して数をこなしていく仕事に、便利に使われ続けてしまうのだ。
 年齢とともに、そういう仕事はできなくなっていく。そのときどうするかを早くから考えて、広い視野と自分なりのアイディアを持つ習慣を身につけたい。

(2004年04月23日)

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行政のSOHO支援への疑問

 行政の「SOHO」定義は、自治体によって微妙に違ったり(たとえばコンピュータ関連の仕事に限定するかどうか)、お役所のなわばりによって違ったり(たとえば経産省につながる団体と、厚労省につながる団体)するので、あんまり当てにならない。

 いずれにしろ、行政がSOHOを支援する目的は、主に次の3つであるらしい。
1)起業してほしい
2)お金を使ってほしい
3)人を雇用してほしい

 「起業」とは、ある程度の事業規模を想定する言葉。行政としては、ある程度の事業規模である程度稼いでくれれば、ある程度の税金を払ってくれると期待しているらしい。

 2の例として、税金をまけるからお金を使ってよね、というIT投資促進税制がある。
 3も結構切実らしい。人を雇ってくれるなら補助金を出しましょうという制度さえある。ただ「雇用」だから、私たちが仕事のつど人を募って出来高払いする「外注」は、いくらお金を使っても補助金の対象にはならない。

 私のまわりには、事務所を持ち人を雇用しているSOHOは非常に少ない。成長志向・拡大志向より、フレキシブルな人間関係・フレキシブルな受発注関係がSOHOの強みだと考えている人が多いように思う。
 とすれば、行政のSOHO支援や、SOHOに対する期待は、だいぶ的はずれということになる。つまり、税金をたくさん払ってくれる・たくさん消費してくれる・大勢雇ってくれる…という人材を育てたいなら、「手に職」系ではなく「起業家・経営者」系に絞って支援するべきなのだ。

 私は、何かで選ぶ欄があれば「自営業」に○をつけている。面白いことに、「自営業」という言葉には必ずしも「成長志向」「規模の拡大志向」を感じないし、行政も必ずしも「規模の拡大」を期待していない感じを受ける。家族経営の小さな商店などを含むイメージだからだろう。

(2004年03月23日)

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主婦は起業しない

 「国立社会保障・人口問題研究所」Webサイトで「日本の将来推計人口」を見てみた。
 出生率の予測によって3段階の数値が出されているが、「低位推計」によると、今年が日本の人口のピークであり、なんと来年から日本の人口は減少を始めるとみられる。

 データを確認したところ、人口は劇的に減るわけではない。人口が減る中で高齢者の比率が劇的にアップすることが、心配されているのだ。
 「自治体破産」に直面している市町村担当者は、あせっている。こうなったら主婦と元気な高齢者を働かせるしかない、高齢者(特に定年退職した男性高齢者)は、放っておいても働く意欲十分だから、主婦の就業支援に力を入れよう!と、各自治体では「女性のための起業講座」などを開いている。

 …これが、一向に成果を上げない。
 たいがいの主婦は、起業したいなんて思っていない。まして人を雇って地域の経済に貢献しようなんて思っていない。

 主婦は冷静だ。いわゆる「在宅ワーク」の規模で十分だと判断している。
 世の中の仕組みは、主婦を稼がせないようにガッチリできあがっている。税制も、社会保険制度も、企業の福利厚生も、育児環境も。
 特に夫がサラリーマンの場合、この枠はみごとに組み上がっている。(このへんの解説については『小さな在宅ワークの経理』をお読みください)

 ある程度以上の金額を稼ぐか、あるいは課税所得ゼロに抑えるか。サラリーマンの夫を持つ主婦には、働き方にはこの両極端しかなく、中間は不利だ。
 市町村担当者は「ある程度以上の金額を稼ぐ」主婦をおおぜい作りたいのだろうが、枠があっては中間で試行錯誤することができない。本当に主婦を頼りにしたいなら、主婦を変えようとするより、世の中の仕組みのほうを変えるべきだ。

(2004年01月22日)

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