テープ起こし3

クライアントが好きだからやる

 「録音状態が悪く、内容が難しい」音声の話題、続き。
 そんな仕事なら苦痛と思われそうだけど、事実たしかに肩はこるけど、私はここの仕事が好きなのだ。
 なんたって、このクライアントはとってもいい会社(and 親切な担当者の皆様)。

 発言者メモが欲しいと要望したら、いつもメモを取ってくれている。だから、話者の特定に苦労しなくてすむ。私は話者の聞き分けがすごーく苦手なので、天国。
 会議当日に配布された資料が必要と要望したら、いつもPDFファイルにして送ってくれている。大きさの違う資料が何点も、トータル200ページぐらいあっても(もっとあった時もあったかも)、全部送ってくれる。
 スキャンしてPDFにするというのは、結構面倒な作業だ。私はアンケート集計の仕事でやっているから、よく知っている。スキャナがオートシードフィーダー付きであっても、詰まったり2枚一緒に行ってしまったりすることはあるのだ。

 しかも、聞き直したファイルを戻してくれるので勉強になる。我ながら笑ってしまうような大間違いがあって、ファイルを見比べるのは楽しい。
 この仕事は、専門家であってもちょっと守備範囲が違うだけでわからない用語が出てくるような内容だから、たとえ音声が良くても完璧に起こすなんて無理。笑う余裕がないと取り組めない。

 (ついでにもう一つ、安定した会社なのもありがたい。仕事をした出版社が過去3社倒産した私としては、取引先の安定度はやっぱり気になる)

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国庫金

 「録音状態が悪く、内容が難しい」音声の話はまだ続けたいのだけど、さっき面白い郵便物が届いたので、ちょっと割り込みでその話。
 そっけない圧着ハガキ。「大学かな?」と思った。お盆前、大学の夏期スクーリングに3週間行っていたので、その試験結果の通知に毎日おびえてるのだ。
 でも、「国庫金振込通知書」と書いてある。国庫金って? 振り込め詐欺?

 開けてみて納得。この前、ある中央官庁のテープ起こしをしたのでその振込みだった。はあ、どこの官庁の仕事でも「財務省会計センター」から振り込まれるわけですね。中央官庁から直接に受注したのは初めてだったから、知らなかった。

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不明マークを入力すると落ち込む、ということは

 先週末に入った「録音状態が悪く、内容が難しい」音声は、1hだったので自分で起こしている。
 どう起こせばいいのかなと考えながら、今起こしている。

 難聴音声に対しては、「1.断る勇気も必要」「2.根性で起こす」「3.ソフトを駆使する」…聞いたことがある対策は、主にこの3つだ。
 この仕事に関しては、1は採用しない。(他社からの仕事では、一度だけ断ったことがある。断ると自分も落ち込む)
 2は、とにかく時間をかけて何回も聞き直す、集中を保つ、しつこく調べる、ということ。正論だけど、この仕事には当てはまらない。待てば正規の会議録が出るのに、それを待てないというクライアントの事情だから。

 3、ソフトを駆使。
 デジオンの豊富な音声加工機能は、かなり優秀らしい。結構何人もの同業者が、聞こえなかったらこれでいじってみると言っていた。
 そのたびに刺激を受けて自分でも使ってみてるのだけど。なぜか、どの機能を使ってもあんまり変わらない。私のPCのサウンドボードやヘッドホンと相性が悪いのかな。

 私のPCでは、デジオンよりOkoshiyasu2のほうがむしろ聞こえる。Okoshiyasu2のイコライザをいじるとかなり変わる。だけど、特に音が悪い場合は、イコライザをいじりすぎて、何が何だかわからなくなってしまうし、ましな聞こえ方を見つけるのに時間がかかる。

 だから最近は、DSS Playerのノイズキャンセル機能を2ぐらいにして聞くことにしている。手間としては、これが一番簡単。
 ノイズキャンセルをかけると音声が平板になって、声の違いを聞き分けにくくなるけど、この仕事に関しては問題ない。クライアントがきちんとした発言メモを作ってくれるので、話者の特定に頭を悩ませる必要がないからだ。
 とりあえずソフトでの加工方法は、私の場合これで決まり。

 いくらクライアントがざっとでいいと言ってくれていても、不明マークを1つ入力するたびに気分は落ち込む。1行の文章に3つも入ろうものなら、起こし作業をやめたくなる。
 「不明マークを入力するたびに落ち込む」、これでモチベーションが下がるのが問題だときのう思いついた。そこで、不明マークを最初に200個まとめて入力してみた。1時間ならたぶんこれで足りるだろう。
 不明と不明の間に、聞き取れた文字を入れて起こす。

 そうすると、案外不明マークは使わないじゃん、という明るい気分になってきた。45分起こしたところで数えたら、たったの70個(!)しか使ってない。
 聞き直せばもう少し減ると思うし。
 気分の問題ってかなり大きい。
(実は、前半30分は資料に沿って説明が行われたので、聞き取れなくても資料から拾えたのだけど)

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「修行」のテープ起こし

 今夜、テープ起こしの仕事が2本入る予定。1本はもう予約してあるけど、もう1本は誰に頼もうか。自分で起こすつもりだったけど、今週は妙に忙しくて。
 録音も悪くて内容も難しい、肩こりがひどくなる仕事だ。不明だらけで全然かまわないからとこちらが言っても、誰の納品メールにもお詫びの言葉が書かれてくる。

 テープ起こしをする者にとって言葉が聞き取れないほど、悔しく情けないことはない。
 あらかじめ状況を説明して、これは不明だらけが普通だからと頼んでいるんだけど、実際に不明だらけになると、本人は傷つく。それがわかるから、こちらも頼みにくい。

 実は私自身も、クライアントに毎度お詫びの言葉を書いて納品していたのだ。
 でも、それだとクライアントも頼みにくくなる。録音は悪い、内容はやたら難しい、だから不明だらけでOKと、クライアントも私に予告したのだから。

 この仕事って一種の修行(←技術を身につける「修業」でなく、悟りを目指して励むような「修行」)だなと、最近は思う。
 自分がどう起こして満足したいかじゃなくて、クライアントが望むものを提供するという切り替え。

 音が悪いのは、審議会の傍聴席から録音しているから。もちろん隠し録りではなく、録音許可を取っているという。だいぶ後になれば正式な会議録が発表されるんだけど、地方の本社に中央の審議会の様子を早く報告するのが、東京事務所の使命だ。
 きっと、傍聴に行く各社は、どこもこうやって努力してるのだろうと思う。正式な会議録はライン録音された音声から作られるのだろうけど、発表を待てない各社が、同じ音声(のもっと悪い版)を、あちこちで苦労してテープ起こししている。

 だから、起こす者としては、不明だらけでもクライアントに貢献しているという自信を持って、にっこり作業して…。そこまで悟りきれないんだけどねー、ホント。今夜入る仕事、どうしよう。

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殴られる村人

 「ICレコーダーの横で咳をするぞ」と脅されたら、何でも言うことを聞いてしまうだろう。「お代官様っ、それだけはご容赦をー!」

 きのう起こしていた音声が、まさにそれだった。録音機材の近くに、やたら咳をする人がいる。近くの咳というのは、普段の生活ではさほど特別には感じないけど、音声で聞くとすごい爆発音なのだ。
 ヘッドホンをしているから、自分の頭の中で爆発音が響く。「ゲホッ、ゲホッ」というより「ガッ! ガッ!」。
 咳とかぶる部分が聞き取れないのはまあ仕方ない。でも、その前後の音声は起こさなければならないから、何度も同じところを聞く。「ガッ! ガッ!」が来るのはわかっているけど、避けるわけにはいかない。
 なんとか聞き取って先へ進むと、次の「ガッ! ガッ!」がすぐ出てくる。

 お代官様の手下に殴られている、無力な村人になった気分。

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音声に戻せることは重要か

 テープ起こしの表記は、文字を音声に復元できることを重視して決まっている場合がある。
 例えばよくあるのは、「そのほか」と発音されたら「そのほか」と入力し、「そのた」と発音されたら「その他」と入力するという表記。両方を「その他」と表記しては、元の発音がわからないというわけだ。

 でも、音声に戻せることは大事だろうか。
 起こした文章を普通の人が見たとき、「そのほか」と「その他」が混じっている理由が理解できるだろうか。素晴らしい工夫だと思ってくれるだろうか。

 自分がしゃべるとき、「そのほか」と「そのた」は、意味的な必要があって言い分けているわけではない。前後関係による言いやすさなどで、なんとなく口から出ているだけだと思う。
 だから、「そのほか」を「その他」と表記しても問題ないはず、文章としては「その他」に統一するほうが見た目が美しい、と最近よく思う。

 でも、私が変えれば済むというわけではない。私が仕事を頼んでいる人たちも、当然のこととして使い分けている。納品してもらったファイルをこちらで置換するのと、「ほか」は「他」にしてねと伝えておくるのと、どっちがいいだろう。
 「ほか」以外にも、同じ言葉で同じ意味なのに発音次第で表記を変える慣習になっている言葉はいくつかある。「ほか」をいじるなら、それらもどうするか考えないといけない。

 と考えていくと、おっくうになる。結局「そのほか」→「そのほか」、「そのた」→「その他」を使い続けるほうが楽ということになる。うーん。

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