2008年1月号 山本牧子さん2

仕事場以外で仕事するために

 牧子さんは義父母宅がお隣だから、日頃からいろいろ気を遣わなければいけない。うちは離れているから普段は気楽だが、義父の誤飲が心配になっても「夕食時だけちょっと見に行く」というようなことができない。
 私は夫をせっついて、店の閉店時刻を夜8時から7時にさせてしまった。そんな遅い時間にクリーニングを持ってくるお客などいないのだから問題ない。これなら朝夕の食事は義母が、昼食は夫が見ることができる(店と義父母宅は近いので、夫は昼食を義父母宅というか自分の実家で食べている)。

 それでも、昼間誰もいないのが危険な時期がいずれ来るだろう。店をやめることはできないから、そうなったら私が向こうの家で仕事をするのが一番いいかもしれない。
 自宅以外の場所(義父母宅や、義父が入院してしまった場合は病院など)で、仕事をするためには何が必要か。

 介護の問題とは関係なく、最近メールソフトというものを使っていない。Webメールのほうが、どのパソコンからも過去の受信・送信メールを見ることができて便利だからだ。
 最初はGmailを使ってみた。でもフォルダを作ってメールを整理できないのは不便で(Googleの強力な検索機能を使えるから問題ないと、Gmailは主張するけど)、結局ニフティのWebメールに仕事用のメールを転送して使うことで落ち着いた。
 これで、普段はデスクトップPCを使っていても、出先ではノートPCで問題なく過去のメールを参照できるようになった。当然、携帯にもPCメールは転送している。

 IDとパスワードを入れればどのPCからでも、ネット上のデータを自由に読み書きできる。そのWebメールのメリットが気に入ったので、ファイル保存にも応用することにした。
 レンタルサーバーは使っているけど、仕事上のファイルを置けるセキュリティー設定が自分ではできない。オンラインストレージサービスを利用することにした。
 以前から使っていたジャストシステムの「インターネットディスク」は、ブラウザを変えて以来うまく動かない(Lunascapeには対応してないのかも)。結局、オンラインストレージもニフティの「マイキャビ」にした。

 さて、肝心なPCだ。モバイルノートは高い。年に数回のセミナーと年に数回の帰省に持って行くぐらいでは元が取れない。それでB5ノートを持ち歩いていたが、今後毎日義父母宅へ通うようなことになれば、やっぱりもう一段軽いモバイルが欲しい。
 Windows Vistaは不評らしく、「Vista搭載だけどXPにダウングレード可能」なんていう妙な売り方を見かける。私もXP希望で…そうだ、中古を買えばいい。ダウングレードしなくても最初からXPだし、中古の分安い。発売2年程度のモバイルを安く手に入れた。

〔牧子さんのコメント〕
 このお話を伺って、私はXP搭載のA4ノートを“発注”しました。この原稿がブログに掲載されるころには自宅に届いていることと思います。1台持っているんですが、最近はすっかり子供たち専用状態になっているし、容量が小さいので、仕事に必要なソフト全部を入れられない状態だったんです。
 これから先、実家で何かあったらこのノートを持っていって仕事をするつもりです。携帯性を考えたらB5という選択になるのでしょうが、どうも画面が小さいと仕事しづらいような気がして。力持ちなので頑張って持ってあるきます!

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モルヒネ投与と家族の心労

 今年に入って義父の痛みが鎮痛剤で足りなくなり、モルヒネの貼り薬をスタートした。そのとき、牧子さんからいただいたメール。

モルヒネ投与が始まると、どうしても動きが悪くなってきます。
痛みを鈍らせる、つまり感覚を鈍らせるということですから、動作のみならず、内臓の動きも当然悪くなってきます。
誤飲も起こりやすくなってきますので、どうぞ十分に気を付けて差し上げてください。

十分に気を付けるためには、常に誰かがそばにいなければなりませんが、夢を見る時間が長くなり、寝言が多くなってきて、家族がつらい思いをすることも増えてきます。
交代で気分転換をすることも、倒れないためには必要だと思います

 体験した人でなければ書けないこのメール。今の私は「ああ、いずれこうなるのだな」と痛感できてしまう立場だ。
 私がこれを書いている前日(1/12)、親戚がタクシーで見舞いに来るのを夫は大通り沿いで待っていた。そこへ義父が杖も使わず出てきたという。そういうときは本人も気をつけているから転ばないのに、そのあと自宅のトイレでスリッパを脱ぎ損ねて転び、顔に擦り傷ができたという。
 まあ、擦り傷ぐらいで済んでよかった。とはいえ、起き上がってベッドに戻るまでにはだいぶ時間がかかったらしい。
 スリッパは危ないなあ。トイレ内にマットを敷いて、スリッパを廃止すれば…いや、マットも危ない、ずれて滑ることがある。トイレに暖房は入れたけど、古い日本家屋だからトイレの床はフローリング(というより「板張り」)で冷たい。廊下も寒い。どうしたものか。

〔牧子さんのコメント〕
 床暖房にしてはどうでしょうか。スリッパは、足腰が弱ってきたらやめたほうがいいと思います。家の中の段差も要注意です。介護予防のための家の補修は一部助成があるはずなので、どんどん使って直してくださいね。

 「転んだとき、家に誰かいたの?」「誰もいなかった」
 これも問題だ。というか、身体がこの調子で弱っていくともうじき問題になる。義父母宅は、店からほんのちょっと離れている。だから夫も義母も店にいる時間は、家に義父のみになる。

 「十分に気を付けるためには、常に誰かがそばにいなければなりません」、本当にそのとおりだ。私は自宅で仕事をしているが、いずれ義父母宅(あるいは病院)で仕事をすることになるかもしれない。昨年後半ぐらいから少しずつ、どこにいても仕事ができるよう準備をしてきた。
 その話はまた次回。

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辞められない、辞めたくない

(それにしても、お義父様、お義母様という文字は、画数が多いせいかやたらぎょうぎょうしい。ここからは単にお父様お母様で。つまり「牧子さんのご主人のお父様お母様」だ)

 お父様は、がん発覚後3カ月を自宅、3カ月を病院で過ごされたわけだが、自宅療養中にベッドから落ちること1回、お風呂でお風呂椅子からずり落ちること1回、だったという。80歳過ぎの高齢ですでに筋力が落ちていることもあり、自分では起きあがれない。どちらもお母様はそばにいたが、お母様も70歳近いから、一人では助け起こせなかった。
 「ところがね、義父が牧ちゃんは呼ぶなって義母を止めたんですよ。牧ちゃんも忙しいんだから呼ぶなって」
 思いやりはありがたいが、具合が悪くなったら結局みんなが苦労するのだから、直ちに呼んでもらうほうがいい。せっかく隣の家にいるのだから。

 若い人に迷惑をかけたくないというこの世代の気概は、病気になったとき自分を支える力になるとはいえ、お母様も大変だったと思う。その疲れがたまったか、お母様はお父様が亡くなる2週間前に右手首を骨折した。牧子さんはますます忙しくなった。

 牧子さんは、お母様が骨折したとき「自分が仕事を辞めよう」と一度は決心したという。お父様はもう最期を覚悟する状態だったし、お母様も骨折からこの先どの程度回復するかわからない。
 仕事を辞めるためには、このクライアントをこの人に譲って、このクライアントは…。

 牧子さんは、お母様の骨折以前に、かなりのクライアントを人に紹介(つまり譲って)していた。だからこの時点で受注していたのは、長年のお客さんばかり。「こういう内容ですからこうしましょうか」「こうしたらもっと使いやすいですか」と打ち合わせをしながら、一緒に考え、工夫してきた大切な相手ばかりだった。
 それを断る、誰かを紹介する。仕事を辞める。
 考えていくうち、牧子さんは涙が出てきた。だめだ、辞められない。辞めたくない。なんとか続けていく方法を考えよう。

 うちのことはいいのよとお母様は恐縮するが、骨折が右手首では高齢だろうと若かろうと手助けがいるのは仕方ない。牧子さんは2軒分の家事を背負い込むことになった。
 がむしゃらに頑張るラストスパート。葬儀前後の仕事ができない10日間。そして遅れた分を取り戻すべく朝5時起きして、今度はがむしゃらに仕事。

 うーん、参考になる。なりすぎて胃が痛くなってきた…。

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スケジュール調整しやすい仕事を

 牧子さんメール、ラストの部分。

 結局、重要なのは納期が長い仕事を選ぶこと、でしょうか。納期が長ければ、人に頼んで、あとで校正して納品することも可能ですから。
 家庭との両立も、ここがポイントなのではないかと思います。子供が小さかったり、家族の介護に携わっているような場合には、スケジュール調整しやすい仕事を選んでいくしかないと思います。

 これは、私の場合問題だなあ…。テープ起こしもそれ以外も、短納期でビュンビュン片付けるような仕事ばかりだ。

 テープ起こしは、牧子さんのメールを読んで以来、テープ起こしをお願いする人用のブログを作った(パスワードのかけられるブログサービスを利用)。
 ワードの書式設定や、(笑)(笑い)どちらの記号を使うか、どの程度に段落替えし、『記者ハンドブック』を基準にしつつ何に独自の表記を使うか。そういう細かい部分については、今までは特に頼んでいなかった。自分の個人的な好みだから最後に調整していたのだけど、そこからやってもらえば、いざというときチェック時間が短縮できるし、最悪の場合はクライアントに直接納品してもらうこともできる。

 ゴーストライター的な仕事は、1社は大勢スタッフがいるようだから、私が無理でも誰かいるだろう。もう1社からは年数回だから、ぶつからないことを祈るのみ。

 昨年4月、「データ入力+集計レポート作成」の仕事のやり方を変えることにした(2007.04.11の記事)。忙しいとこぼしているくせに、16工程中「入力・校正」という1工程しかスタッフに頼んでいない自分の馬鹿さ加減に気づき、作業マニュアルとチェックリストを作って委託工程を増やすことにしたのだ。
 ベテランのスタッフ1名は16工程中8工程をすでに問題なくこなしてくれているし、あと2名も7工程クリアしてくれているので近々8工程目のマニュアルを送る予定。

 引き継いでない8工程のうち6つは、原稿のナンバリング→スキャニング→スタッフに送信などの作業だ。万一の場合は原稿自体をスタッフに送れば、作業を省略できる。
 残りの2工程は説明がとっても面倒なので、マニュアル作成に何日もかかる。あるいは対面でレクチャーするか…。ここがクリアできないと、原稿だけ送っても仕事は進められない。この仕事を発注してくれる会社が、最も重要なクライアントだ。なんとかしなきゃ。

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万全の準備をしたのに3日オーバー

今回も牧子さんメールご紹介の続き。

仕事量を減らしたり誰かに託したりされましたか。

 仕事は、短納期のものはなるべく紹介させていただく形にしました。長期のものを中心にして、一部は外注もしました。常に、突然1週間仕事ができなくなることを念頭に置いてスケジュール調整を行なっておりました。

 紹介するというのは、クライアントを同業者に譲ってしまうことを意味する。本人にとっても残念な事態だし、クライアントが「あなたに出したいのだ」と抵抗する場合もある。けれど、非常時に安心して譲れる相手がいるというのも、その人の財産と言えるだろう。

〔牧子さんからコメント〕
 短納期なのに残ったのは、まさに、「山本さんができないときは自分で起こします!」と言い切ってくださったクライアントでした。うれしいやらしんどいやら、でしたね。

突発的なことにどう対処されましたか。

 結局、葬儀の前後で10日お休みをしたんです。
 7日は休んでも大丈夫なようにしてあったんですが3日オーバー。この3日を取り戻すのは大変でした。ここ半月ほど、毎日5時起きで、休日抜きで仕事をしました。
 今日の昼、大口の納品を完了しました。たまたまこの仕事が、42時間を4カ月で納品するというものだったので何とかなりました。もちろん、ほかの仕事もあったんですが。雑誌のような短期のものばかりだったら、仕事に穴を空けることになったんじゃないかと思います。

 「ある日突然、仕事を1週間休むようになるかもしれない」という目安が、私には役立った。1週間をどう乗り切るかを考えて準備していけばいいのだ。このメールをいただいて以来、考えて少しずつ準備を始めた。

 それが10日も仕事を休むことになった事情について、今回お会いしたとき伺ってみた。
 当然、亡くなる直前は危篤ということで病院に詰めている。月曜に亡くなって、お寺の都合でお通夜が木曜、告別式が金曜。山本家は親戚が多く、泊まりがけで葬儀に来る人も多かった。しかも、どうしても葬儀に出られなかったからと、葬儀後に泊まりがけで訪れた親戚があった。この「葬儀後」の部分が誤算で、10日になったのだという。

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