2008年1月号 山本牧子さん1

ヘルパーとして働きませんか、って

 数年前から透析していたお義父様に肺がんが見つかったのが、昨年春。そして昨年10月に81歳で亡くなった。その半年間について牧子さんにメールで質問したところ、10月末にお返事メールをいただいたので、3回に分けて紹介したい。

私が今回伺えたらと思ったのは、在宅ワークと介護とその他(家事・育児・役員・自分の趣味や余暇など)のバランスについてです。在宅ワークと介護を両立するときどんなことがポイントになると感じますか。

 あまりにあまりの半年だったもので、バランスをとろうとか、余暇がほしいとか、そんなことを考えている余裕はありませんでした。優先順位としては、1位が義父、2位が仕事、3位がPTAかな。

 ただ、PTAについては、なるべく先回りしていろいろな根回しをしました。
 役員とだけ連絡を取って済む場合はほとんどなくて、何をやるにしても、学校側とも外部の方とも連携しなくてはいけませんから、先回りして根回しして、「何かあったらこうしてね」という連絡を、常にほかの役員に入れておくという形。

 義父は何しろ、いつ何があってもおかしくない状況でしたから、「ある日突然、仕事を1週間休むようになるかもしれない」と、常にそのことを頭に置いて、仕事は納期をなるべく長くいただけるように、ホームページ上では常に、実際にスケジュールが埋まっているのより2週間程度長めに、新規予約受付開始時期を表示するようにしていました。

テープ起こしって知識が増えるので案外役に立つ…そんなことありましたか?

 医療関係の起こしは結構あるのですが、医療と介護は全然違うんですよね。
 で、介護の方は、うちのお客さんではほとんどないので、正直、仕事の知識が役に立ったと感じたことはありませんでした。私には介護の知識が必要だと感じましたので、お金を払って、時間をかけて学校に通って、ヘルパー2級を取得しました。

 ホームヘルパー2級の取得について牧子さんに伺ったら、すごい受講時間数のようだったので、今あらためて調べてみた。講義60時間、実技42時間、実習30時間…。すごすぎる。ヘルパーとして働こうというわけではないのに、家族の介護の知識のために、ここまで勉強してしまう人は少ないだろう。
 ちなみに、ヘルパーも人手不足だから、牧子さんのところには就業説明会に参加しませんかというダイレクトメールがしょっちゅう届くそうだ。

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先にPTAの話

 正月明け、ついに決心して牧子さんにお願いメールを出してみた。快諾してもらえたので、さっそく品川へ説明に出向いた。
 お子さんもいて、お義母様もいらして、年度末に向けてテープ起こしが繁忙期に入り、しかもPTAの副会長をしているという忙しさの中での快諾に、感謝。

〔牧子さんからコメント〕
 「そろそろ新しいことをしたいなぁ、何をしようかなぁ」と思っていたら、廿さんからのメールでした。私にとってはものすごくありがたいお話でしたね。廿さんのお義父様の状況を伺うと、どうも私がピンチヒッターで登場する可能性は低そうです。「私でいいのか?」という大問題はあるものの、とりあえずお話だけでも伺ってみることにしました。

 お聞きしたら、「子供、義母、仕事、PTA」の中で、PTAが一番大変だし心配だそうだ。
 「子供はまあ大丈夫、義母は義父の死去2週間前に骨折したけど今は回復しているし、外へ買い物に行ったりはできないものの自分のことは自分でできる。仕事は必要なら頼める体勢を作ってあって、相手もプロだからスムーズに進む。
 だけど、PTAの役員をしている人たちはさほど仕事経験がないから、何でも前倒しで準備したり指示したりしておかないと、自分に急用ができたとき危ない」

 PTAに関するこういう話、去年も聞いたなあ。同じくしょっちゅうPTA役員をされている卓也ママさんかな。
 忙しい人というのは、能力があって人に頼られるから忙しいのであって、仕事も家庭も役員も趣味もなんでもこなす。忙しさに鍛えられて、ますますなんでもこなす力がつき、ますます頼られてしまう。
 おかげで、のんびりと「お母さんしてる人」とはいっそう処理スピードに差がついて、そのギャップに苦労することになる…。それがPTA役員独特の大変さらしい。

 山本家は電気関係の会社を営んでおり、ご主人が3代目。牧子さんがPTA副会長なのは小学校だ。代々その土地に住んでその土地で仕事している家は、狙われ(?)やすい。この先、中学校も危ないんじゃ…。

 さて、次回から問題の介護の話だ。まず家族関係について整理しよう。

20080118n_3  

 夫の両親が年の離れた夫婦ということまで含めて、全体に似た感じ。
 決定的な相違点は、夫の両親は牧子さんちのほうがだいぶ年上なこと。うちの義母がまだ元気なのに対し、牧子さんはお義母様の心配もしなければならない。
 それと、義父母宅との距離。半同居の場合に苦労することや楽なことは何か。クルマで20分(私自身にとっては「自転車で30分」)の距離だと、何が面倒で何が楽なのか。その距離の違いは、在宅ワークにどう影響していくのか。

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条件を列挙してみた

 私は非常時の代理講師を牧子さんにお願いしたかった。でもそういう失礼をしてしまった後では、お願いメールがなかなか出せない。今日は仕事が忙しいからメールを書く時間がない、仕方ない、と自分をごまかして日がたっていた。

 テープ起こし界には優秀な人材が多い。ただし、テープ起こしのスキルが高いことと、人に教えられることは違う。
 私は工房や工場に勤めていたので、人に会う仕事をしたことがなかった。だから、入力会社のパートを始めた頃は、在宅さんに仕事の説明をするたびに緊張し、声が震えて苦労した。入力仕様を説明し質問に答える、新しい在宅さんの面接をする…などの経験を通して、人前でしゃべることに徐々に慣れていったのだ。
 代理講師をお願いしたいのは、テープ起こし自体のスキルが高く、なおかつ人前でしゃべったり教えたりする仕事を経験している人。牧子さんは以前、いろいろな会社へ何かの講習をしに行くような仕事をされていたのだ、たしか。数年前には音声加工についての講演もされている。

 そして、他人の作ったテキストで教えられる人。自分の考えと違うことが書いてあっても柔軟に使ってくれる人。もっとも、この点については「廿さんのテキストにはこう書いてありますけど、私の経験では」と、かまわず言ってくださいと牧子さんにお願いした。
 実務についたとき、「この発注者はセミナーで学んだのと違うことを言う。きっと悪徳業者に違いない」と疑心暗鬼になってしまう人がいるものだ。基本的なラインはあるにせよ、実際は発注者ごとに仕事の進め方や要求されるテープ起こしのスタイルは違うのだと、参加する人には理解してほしい。
 だからセミナーの席でも、同じ質問に宮田さんと2人で答えるときは「宮田さんはこうおっしゃいましたけど、私のところでは違います」と、わざわざ言うことにしている。

 また、セミナー参加者は、単にテープ起こしの技術を学びたいわけではなく、在宅ワークというスタイルについて知りたがっている。技術的なことはQ&A掲示板を使って教えられるから、むしろ仕事スタイルと生活スタイルが、参加者の参考になる人がいい。
 具体的には、できたら独立自営型と登録型の両方の仕事スタイルを経験した人。テープ起こしを受注するだけでなく、発注経験もある人。できたら子持ちの人で、しかもその子供があまり幼くないこと(幼児は、親の外出予定を見抜いたかのように熱を出すという特殊能力を持っているから)。そして、差し迫った家族の介護をかかえてなくて、打ち合わせの都合を考えれば東京またはその近郊の人…。

 どんな条件から見ても、お願いしたいと私が思う方の中で最有力候補は牧子さんだ。お義父様が亡くなられたことを利用するかのようにお願いメールを出すというのは嫌だった。でも…。

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知らなかったとはいえ

 昨年秋、牧子さんにとんでもなく失礼なことをしてしまった。

 昨年10月10日付けの記事にも書いたけど、親の介護と在宅ワークは両立できるものだろうかと、私はいつも不安に思っていた。
 現実にどんなふうになるものだろうか。心の準備が必要だ。外で働いている人や専業主婦ではない、在宅ワーカーの場合を聞きたい。10月12日の夜、おそらく介護まっただ中のはずの牧子さんに、「すごーく恐縮しつつ…」というタイトルでメールを出した。

ブログに「在宅ワーカーでも親の介護は不安」と書いていたら、その当日義父が入院してしまいましたー。1週間で退院予定ですし、命に別状はないんですが、楽天的な人が今回に限ってひどく気落ちしていて。
ザイニュー10月号は介護中の方にお話を伺えたら、自分の参考にもなる…と思ったとき、思い浮かんだのが牧子さんなのですが。

 わずか数時間後に返事が来た。

廿さん、ご無沙汰しております。
すごーく恐縮しつつお送りいただいたメッセージに対する返信としては、
非常に書きにくいものがあるのですが・・・。
実は、10月8日に義父が亡くなりまして、昨日が通夜、本日が告別式でした。
ここ数年透析をしていたのですが、春に肺がんが見つかり、最後の3カ月は入院生活でした。

 血の気が引いた。告別式の当日に、こんなメールを出してしまうなんて…。あああ、ごめんなさい。
 牧子さんは、介護について学ぶべくヘルパー2級を取得した。長ーい介護生活を想定されていた。それに、うちの義父は2年半前に見つかった食道がんで大手術をしていながら、このとき命に別状はなかった。だから私は、牧子さんのところもそんな状態だろうと勝手に思いこんでいたのだ。
 初めての育児に入るとき、子供の成長は千差万別と聞かされる。同じように、病気や老いの進行も千差万別なのだと、ここで痛切に思い知った。

※病気と老いは別々に考えられないことを、義父を見ていて知った。病気で寝ていると若くても脚が弱ったり体力が落ちたりするが、起きられるようになれば回復する。だけど高齢者の場合、体は使わないとすかさず老い、そのまま戻らず固定してしまう。

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整然とファイリングできる人

 というわけで、今月登場してくださるのは山本牧子さん。義父にポックリ系事態が起きた場合は、就業体験セミナーのテープ起こし講師として代わりに行ってくださいます。

(1/11にお会いしたときICレコーダーを持っていなかったので、今回は会話形式の対談にはできない。思い出しつつ書いてみたい。事前に申し込んでの取材ではなく、当日の雑談。それと、いただいたメール内容など。)

 紙の雑誌だった頃の月刊在宅入力者第14号「特集 応募メール大添削」で、テープ起こし部門の応募メール審査員を牧子さんにお願いした。この特集でデータ入力部門の応募メール審査員をしてくださったのが、宮田志保さんで…。
 牧子さんと宮田さんには共通点がある。今回、牧子さんにお会いしてそれを思い出した。

 今回、打ち合わせ前にセミナー関連書類や課題音声をデータの形で送信してあった。私にも、かろうじてその程度の事務能力はあるのだ。
 打ち合わせ当日。牧子さんは、その雑多な書類をきれいに印刷して、話の進行に必要な順番にファイルに綴じ込んだ状態で持っていた。私は、適当に大型封筒に投げ込んで持っていっただけだ。

 「応募メール大添削」のときもそうだった。
 宮田さんのお宅にお邪魔したら、宮田さんは整然と応募メールを印刷し、必要なところに赤線やら書き込みなどを入れて整理されていたのに、私は裏紙に印刷したのをばさーっと持っていっただけ。翌日、牧子さんとお会いしたら、こちらも宮田さん同様に整然とファイリングされていて…。
 つくづく大ざっぱな自分が恥ずかしい。見習わなきゃね。

山本牧子さんの自己紹介

 自営業の形でテープ起こしをしている山本牧子です。屋号は「テープ起こしのやまもと」。なんでこんな屋号なのかというと、仕事用に電話を増設する資金はないから、「やまもとです」と電話に出て差し支えない屋号にしたかった、という情けない理由からです(^^;。
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テープ起こしのやまもと

 2000年から始めました。“SOHOワーカーに多い”とされている昭和39年生まれ世代(早生まれなので40年生まれですが)です。
 クライアントは大学の研究室、出版社、企業、企画会社、フリーライター等で、直接依頼を受けています。もちろん、いきなり直になったわけではありません。スタートは某通信教育で学び、試験に一度落ち、再試験を受けて合格。通信教育系列、知人、登録会社と3つの依頼元からの仕事をいただく形でスタートしました。
 クライアントと直取引オンリーになったのは開業から2年くらいたったころ。途中でホームページなども開設し、直取引のクライアントが増えてきて、両立できなくなってしまったんです。

 今の仕事に入る前の数年間は専業主婦(出産があったから)、その前の10年間は某企業にお勤めしていました。私が勤め人だったころはちょうどバブルの時期で、会社は人材教育に金を惜しまなかったとき。ビジネスマナーもパソコンもマーケティングも、全部会社で仕込んでもらいました。
 こういう経験が、今、ものすごく役立っています。お客様と打ち合わせするのが苦にならないのは、仕事を始めてみて、ものすごく武器になると感じました。まず言われることは、「在宅で仕事をしている人って暗いのかと思ったら、違うんですね」ということ。ここからお客様との話がはずんだりするんですね。

 仕事以外では、今は小学校のPTA副会長をしています。「人間、何事も経験だ!」と引き受けたところ、昨年春に義父の肺がんが見つかり、「まさかこんなことになるとは・・・」という一年になってしまいました。その父を秋に見送り、ようやっと家族も落ち着いてきたので、今年はいろいろ新しいことにチャレンジしたいと思っています。

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