2007年7月 卓也ママさん

卓也ママさん1

(2007年7月の連載を再構成したものです)

ソリューション&インキュベーションの人

 今回、お話を伺ったのはハンドルネーム 卓也ママ(本名 山口智子)さん。2005年まで存在した「ホームオフィスナビ談話室」というネット上の掲示板に常駐し、初心者の質問にもていねいに答えてあげていた方だ。行政主導の各種在宅ワークセミナーで講師をされている経験などから、行政の動向にもくわしい。
 以前、「マスコミが作った在宅ワークブーム」と「いっとき乱立した在宅ワーク系通信教育講座(悪徳商法も含む)」というものがあり、現在はそのどちらも消滅している。その背景には、在宅ワークに対する行政の考え方に変化があったらしいことが、今回伺ったお話から見えてくる。

 卓也ママさんは驚くほど幅広い業務を手掛けている。仕事チームのメンバーに対しても、独特の募集(いや、「募集」じゃないんだな…)方法と、独特の養成方法を持っている。
 その仕事ぶりをお聞きしていると、2つの言葉が浮かんでくる。仕事先に対してはソリューション、メンバーに対してはインキュベーション。

 普通の売り方が「私の都合」を優先したものだとすると、ソリューション営業は、「困っているあなたの都合」を解決するべく、複合的な仕事を提供する。
普通の営業:「私はテープ起こしができます。私にテープ起こしの仕事をください」
ソリューション営業:「このテープ起こしは何に使いますか? では起こした後は記事としてまとめましょう。Webサイトへの掲載も作業します。アクセス解析はこれをこう設定すれば御社に役立つ事項がわかります。ええ、解析レポートもこちらで作成できますよ」

 一方、卓也ママさんの仕事チームでは、メンバーが自分の専門分野を確立して次々に独立していく。卓也ママさんはそれを喜びつつ、また次の人材発掘・養成にチャレンジする。
 インキュベーションとはもともと卵をふ化させるという意味で、一時期、行政がインキュベーション施設というものをやたら作った。ただし行政のは、「起業」路線を支援するもので在宅ワーカーは対象にしていない。
 卓也ママさんは、セミナー講師やメンバー育成を通して、在宅ワーカーのインキュベーションをしている。結構多くの人が考えることなんだけど、あんまり成功例がない。ぜひ見習いたい。

対談者の自己紹介

山口 智子(ネット上では“卓也ママ”の固定ハンドルネームであちこちに書いております)

 1964年、新潟地震直後の傾いた病院で生まれ、転勤族の家庭に育ちました。
 インベーダーゲーム大流行のころに、「自分でプログラム組めばただでゲームができる」と、パソコンに目覚めます。デパートのパソコン売り場にて、ひそかにBASICのコードをいれて遊んでおりました。
 文教大学情報学部経営情報学科を卒業後、科学技術計算系の情報処理サービス会社に入社し、パソコン&UNIXワークステーションを活用した人工衛星画像の処理/解析業務に携わりました。

 1993年長男出産のために退社。しばらくの専業主婦時代を経て、在宅にてデータ入力の仕事を開始。その後テープリライト、PCインストラクター、WEBコンテンツ原稿執筆、情報処理試験の受験指導、システム開発、ネットワーク構築など、なぜか多種多様な業務にかかわるようになりました。
 現在は FileMakerProを用いた管理システムの構築や、学術団体向けデータベースの作成、サーバー管理、販売サイトのWEBサイト立ち上げなどがメインの業務となっています。

在宅ワークとSOHOワークは違う

新宿のレストランにて、赤ワインで乾杯。何に乾杯って…、再会を祝してか、初めての「じっくりおしゃべり」に、かな。いろんなイベントで顔を合わせても、名刺交換しながらの立ち話で、ゆっくりじっくりお話を伺うのは初めてだから。

卓也ママ●まず最初の話として、在宅ワークとSOHOワークって全然違うと思うんです。やっぱり子育て主婦の働き方は、家族の状況と切り離せない。

廿:そう、その2つはどうも違うと私も思います。仕事で外にも出るけど、私は自分がSOHOだという気持ちには全然なれない。やっぱり在宅ワークって言ってます。

卓也ママ●私の仕事形態は、自己紹介するときが一番困る。「何でも屋」って言ってしまうと格が落ちちゃうので、偉そうだけど、「フリーのSEです」って言うようにしてます。SEっていうほど大規模なシステム設計もプログラムも組んでないんですけど、そう言えば話が通るので。

廿:SE(System Engineer)は通りやすくていいですよ。言葉が定着してる。テープ起こしは困りますね。「テープ起こし者」はすわりが悪いし、それ以外の呼び方も定着してない。

卓也ママ●でも実は、職業名って、私のような仕事では難しい。例えば職人の世界だったらナントカ一筋何十年っていう言い方をするじゃないですか。テープ起こし一筋で十数年っていう方もいるかもしれない。でも私の仕事って、毎回違うことをやっているので一つの職業名をずっと名乗ることができない。常にフロンティア的にいろんなことをやるから、そういう意味ではキャリアが積めないんですよね。

廿:ナントカ一筋何十年という世界とはちょっと違う。特に卓也ママさんの場合はそうですよね。ある意味すごく実験的な働き方というかね。

卓也ママ●やっぱり私はお客さんに恵まれたんだと思いますよ。

廿:お客さんが「これはできる?」「こんなのはできる?」って言ってくれるわけですね。

卓也ママ●そう。お客さんが「うちの会社、今度こんなのを入れるんです」って言うから、私が「じゃあ、こういうプログラムをかませると楽ですよね」って作るとか。業務改善お手伝い、みたいな仕事だから、ITサポートの山口ですって言うこともある。名刺の肩書きは「ITサポート・システム開発・データ入力」って書いてある。
だって技術は日々変わるんだもん。「Windows98一筋、十年間」ってあり得ないよね。

廿:それは単なる化石だ(笑)。

卓也ママ●人よりも半歩先を知っていてフォローできるような仕事かなと、最近は思ってます。

廿:そういう立場だからアドバイスができるわけですね。

卓也ママ●そうですね。先もある程度読めるし、過去のこともある程度わかるから。

掲示板が好き

以前、「ホームオフィスナビ」というWeb上のコンテンツがあった。こんな紹介文だった。

Panasonic hi-ho KURASHI Web「ホームオフィスナビ」
松下電器産業株式会社が提供するプロバイダ、パナソニックハイホーの在宅ワークコンテンツ、それがこの【ホームオフィスナビ】。
仕事・育児・家事とそれを取り巻く問題を含め生活提案していきます。

卓也ママさんは、ここの掲示板「ホームオフィスナビ談話室」の管理人として活躍されていた。

廿:ホームオフィスナビの掲示板は、いつごろできたんですか?

卓也ママ●98年ぐらいからだと思う。そのころ、hi-hoがKURASHI Webというのを始めて、そのいろいろなコンテンツの一つとして、ホームオフィスナビができたんです。その中に在宅ワークに関する情報を交換するための談話室があったんですよ。

廿:どういう経緯で管理人さんに就任されたんですか?

卓也ママ●98年1月に、オフィス・ウイル(現・株式会社ウイル)の奥山睦さんの仕事をさせていただいたんです。奥山さんはホームオフィスナビのナビゲーターをされていたから、「よかったらWebサイトにも来てくださいね」って言われて、私も掲示板に書くようになった。管理人を頼まれてもいないけど、掲示板に何か質問があったらレスを返していたんです。そうしたら、正式に管理業務にかかわるようになりました。

廿:掲示板って、「なんでそんなことにこだわってるのかな」ってところですごく深刻に落ち込んでいる人とか、たまに出てくるでしょう。掲示板の管理人って、そういう人にもレスしてあげなきゃいけないし、大変じゃないかなと私は思うんですよ。

卓也ママ●私、掲示板すっごい好きなの。それに、私はあの掲示板、実は営業ツールにも使ってたから(笑)。在宅ワーカーって、その人の人となりがわからないでしょう。自分を知ってもらうツールとして使わせていただきました。

ホームオフィスナビは、掲示板以外にコラムやオンライン講座など内容豊富だったけど、hi-hoコミュニケーションサービスの終了とともに2005年3月に休止された。
在宅ワークに関するいいコラムが多かったので、私はいくつか内容を保存してある。

メンバーは募集でなくスカウト

廿:今、どんな仕事をされてるんですか?

卓也ママ●いくつかあるんだけど、入力がらみでは、ある学術団体の過去数十年分の論文データをデータベース化するとか、名簿的なデータを入力して加工するという仕事とか。どっちも入力自体を私がやることはほとんどなくて、誰かに…でも、その「誰か」っていうのが最近なかなかいないでしょう?

廿:いないですね。

卓也ママ●以前からの仲間は実力もついたしお子さんも育ったし、みんな外に勤め始めちゃったので、今は初心者の方を育ててお願いしてます。PTAを通じてお知り合いになった地元の方に、「パソコンできるんだったら、ちょっとやってみない?」とスカウトしてるの。
技術なんか私が教えてあげられる、大事なのはまじめさとかコミュニケーション能力だと思ってるので。

廿:でも、それって教育がすごーく大変そうじゃないですか。

卓也ママ●使っちゃいけない漢字や記号のこととか、データ入力の基本からですね。USBメモリを渡して、「データはここに入ってるから使ってね」って言っても、「えっ、これどうしたらいいの?」って人もいるし。外部媒体から読み出してハードディスクにコピーするってことがわからない。

廿:今でも?

卓也ママ●今でもそれは多いです。ケータイ普及のせいで、むしろ今のほうがひどい。だからね、地元の人に限るの。相手が困ってたらすぐ行けるでしょう。
小学校のPTAでバザー委員長をやってるんで、バザー委員会の事務局も鍛えてます。文章の作り方とか、ワードやエクセルの使い方とかのアドバイスをしてるよ。
だって、いざ自分が困ったときの持ち駒を増やしておかないと!って思いません? 私や主人の親が、いつ介護生活になるかわからないわけでしょう。いつでもやめられる態勢は作っておきたいんですよ。ヘルプしてもらえる人材とかもね。

廿:それはありますね。

卓也ママ●在宅ワークは、自分の技術を伝えにくいじゃないですか。会社だったら見て覚えることができるけど、お互い在宅じゃできない。だから行って教えるしかないと思って。

廿:その方たち、続いてます?

卓也ママ●子供の友達のお母さんだし、長年知ってるから。教えてあげればだんだん「バザー委員会だより」の仕上がりが良くなったり、USBメモリを渡しただけでファイルの読み込みができるとか、上達していきますよ。

求む!ニューカマー

卓也ママ●在宅ワークを始めたころ、オフィス・ウイル(現・株式会社ウイル)の奥山睦さんから仕事を出していただいて、結構仕事のできる人間と思ってもらえたらしいんです。「データ入力ができるなら、テープ起こしもやってみて」「リライトもできるんだったら800字でまとめてくれる?」「コンテンツの原稿も書ける?」って奥山さんに次々リクエストされて、仕事の幅が広がっていった。
このころにFileMakerProも始めたのかな。「ちょっとした管理プログラムを作ってほしい、お客様がFileMakerPro指定なんだけどできる?」って言われて。

廿:奥山さんつながりですね。

卓也ママ●私はカンペキ奥山さんルートなんですよ。在宅ワークの派閥…と言ったらいけないけど…みたいなものがあるでしょう。私は奥山さんルート。

廿:そういう意味では、私は笠松ゆみさんルートかな。

卓也ママ●それにしても、在宅ワーカーのカリスマというか、ニューカマーが欲しいよね。

廿:フラウネッツの宮田志保さんは私たちより少し後だけど、その後が出てこない。

卓也ママ●うん、宮田さんが最後だよね。

廿:笠松さんは、いろんな意味でとにかく目立ったでしょう。あの方が広告塔になってた面があったと思うんですよ。
100人ぐらい希望者がいてちゃんと生き残っていけるのが2、3人だとすると、誰かが派手な広告塔になってやりたい人を100人呼ばないことには、生き残る2、3人もいない。今、そういう広告塔になれる人がいないんですよね。

卓也ママ●笠松さんとか…、社長さん系ではハッピーコムの戸田江里子さんとかオフィスエムの田上睦美さん、エムネットジャパンの富澤まゆみさんとか…。それからウイルの奥山睦さん、いわきテレワークセンターの会田和子さん…。やっぱりパワーが違うよね、この人たちは。
そういう女性社長がずらーっていう中に、なぜか知らないけど単なる在宅ワーカーの私がいる、みたいな(笑)。以前、そんな場があったのよ。厚生労働省の在宅ワーク検討委員会ってのがございまして、大学の先生や、エージェントの代表さんに混ざって、現役の在宅ワーカーということで私が委員になっておりました。

廿:きら星のごとくですね。

・奥山睦さん…株式会社ウイル代表取締役
・宮田志保さん…特定非営利法人フラウネッツ理事長
 宮田さんご自身は在宅ワーカーというよりSOHOワーカーだと思う(事務所もお持ちだし)けど、在宅ワーカー支援活動も行っているので、ここでは「在宅ワーカーのカリスマ」とお呼びしています。
・笠松ゆみさん…2006年3月までSOHOWORKネット主宰。SOHO・在宅ワークに関する著書多数。現在はペンネームで作家としてご活躍。
・戸田江里子さん 株式会社ハッピーコム代表取締役
・田上睦美さん…株式会社オフィスエム代表取締役
・富澤(二松)まゆみさん…2003年から「夫婦仲と性の相談所」を運営開始
・会田和子さん…いわきテレワークセンター代表取締役

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卓也ママさん2

行政は在宅より再就職支援(?)

卓也ママ●省庁的な区割りを言うと、在宅ワークはもともと旧・労働省の女性局が管轄してたわけです。わけあってシングルになってしまった女性が、パソコン技能を身につけることによって在宅で仕事することを支援するという意味でね。
ウイルの奥山睦さんにお聞きした話では、それが今は「再就職」を支援するというスタンスが強くなってきているそうです。

(卓也ママのおまけ)
在宅ワークの適正な実施のためのガイドラインが出たのが平成12年6月です。“育児期を中心に仕事と家庭の両立ができる働き方”なんて文言がでております。
たしかこのガイドラインを発表するにあたってのヒアリングに呼ばれたんです、雪のふる日の霞ヶ関に(笑)。それが縁で在宅ワーク検討委員会に呼ばれたんでしょうか。

廿:在宅ワークを始めるんじゃなくて、会社へ戻してやる…。なるほど、そういう動きになってるのかー。

とすると、かつてマスコミが在宅ワークブームをあおったこと、やたら在宅ワーク系の通信教育講座(テープ起こしとか)が乱立したことの裏には、「役所が乗り出したっていうことは、在宅ワークは有望!」という彼らの判断があったのだろう。
ブームがあきられたこと、稼げる人は少ないという実態が知れ渡ってきたこと、悪徳内職商法が摘発されたこと…などを、私は退潮の理由として考えていた。でも、行政の積極姿勢が後退したという理由もあったのかもしれない。
在宅ワークの現在の管轄は、厚生労働省の雇用均等・児童家庭局。

廿:Home Worker's Webは、そのせいで最近動きがないわけですか?

卓也ママ●あれはそういう理由じゃなくて、今年度もこれから開催のセミナー予定がありますよ。
セミナーをやるときは東京都の広報に載ったりするから、参加者はかなり大勢集まるんです。でも、どうしてもレベル的には低くなってしまって。
最初に奥山さんの全体向け講演が2時間。そのあと、グループごとに分科会をやるの。私はデータ入力の分科会担当でフォローアップ講演みたいなのをするんです。一通り話して、何か質問ありますか?というと、「お金払って登録したほうがいいんですか?」という質問がやっぱりくる(笑)。そういう質問をする人は、常に存在するんです。

「資料請求にお金がいるとか、登録にお金がいるようなところは信用できない」と、言う側は言いあきるほど言っている。でも質問するのはいつも違う人だから、その人にとっては初耳なのだ。

Home Worker's Web 厚生労働省の委託により、独立行政法人日本生産性本部が運営している在宅ワーカー支援サイト。

次々に独立する優秀なメンバー

卓也ママ●行政といえば、eジャパンとかIT講習会って何年ぐらいでしたっけ。各市区町村でやってましたよね。

廿:ああ、IT講習会、いつだろう。そういえばうちの両親も受講してた。

調べたら、2000年に森首相が言い出して始まったらしい。そういえば、当時「IT革命」という言葉もあった…なんて大げさな。

卓也ママ●学校も、パソコンを入れたけど使える教員がいない!と言ってたころね。当時は県や国からいろいろな補助が市区町村の教育委員会に出て、ITサポートにインストラクターが何回も学校に行けたんだけど、今は補助金がなくなって全然行けなくなった。

廿:そのころ、IT講習会のインストラクターをやってた人って結構いますよね。学校に教えに行ってた人も何人か知ってます。

卓也ママ●私、IT講習会とか学校のITサポートとかの場でも人を見つけてスカウトしてましたよ。その中で、「Webの仕事をやりたい」と言ってた人に、じゃあ、こういうのやってごらんって紹介したり指導してたりしたら、その人ももう立派なWebデザイナーさんになりました。(※1)

廿:すごいなあ。やる人はちゃんとやる。

卓也ママ●ホントにみんな、パートに出たか、それぞれ独立したか。独立っていうのは、Webデザイナーとして大成しちゃったとか、インストラクター業ですごく引っ張りだこになったりとか、ヘルプデスクの仕事に行ったら評価されてそこの常駐になっちゃったとか。
私のまわりでは、みんな仕事についちゃったんですよ。なんて優秀な人に恵まれてたんだろうと思うけど(笑)。

そういう人を見つけてスカウトする卓也ママさんもすごい。

卓也ママ●そういう「私はこれがやりたい」っていうのが見つかればいいんだよね。
在宅ワークのセミナーで講演するときは、「在宅ワークをしたい」じゃなくて、「在宅ワークでこういう仕事がしたい」って具体的に考えていきましょうと、いつも言ってます。おばさんの小言みたいだけど(笑)。

廿:ああ、耳が痛いわあ。私も、「入力ぐらいなら簡単そうだからできるかも」っていう安直な気持ちで入ったから。

卓也ママ●でも、今そういうこと言う場所もあんまりないんですよね。年に1回、東京しごとセンターのセミナーのときに、少し話をさせていただいているんですけど、それだけになっちゃいましたね。ひところは私、年4回も講習会で話をする機会があるくらい、世の中で在宅ワークへの注目度が高かったんですよ。(※2)

※1(卓也ママのおまけ)
最近は“WGH:Wheat Gluten Hydrolysate(小麦グルテン加水分解物)”含有のスポーツサプリメントの情報提供&販売サイトにかかわっておりますが、卓也ママはWEBデザインには手を出さないようにしてます(センスないもので…)。
スカウトした方々にご尽力いただいて、立派なサイトができてます。彼女たちも独学でWEBや昨今の技術(CSS,CMSなど)を勉強し、ここまでのものができるようになったという例として紹介させてください。
WGH  ウィグライショップ   Strongholds

※2 東京しごとセンター  東京都が都民の雇用・就業を支援するために設置した「しごとに関するワンストップサービスセンター」

在宅ワークの歴史をたどる(というか、たどりたい)

廿:ニフティの在宅ワーキングフォーラム(FWORK)でシスオペをされてたハンドルネームmiikoさん、ご存じですか?

卓也ママ●私はお会いしたことないけど、堀越久代さんがこの方とお知り合いじゃなかったかな。

シスオペは当時のニフティ用語でフォーラムのリーダーのこと。miikoさんは本名金井さんで、「エクセルで始める在宅ワーク」の著者上田光子(みーこ)さんとは別人。
堀越さんと後で出てくる神谷隆之さんは、労働政策研究・研修機構(JIL)機関誌2004年10月号の座談会の参加者。卓也ママさんも参加されている。この座談会記事は読みごたえがあるのでおすすめ。卓也ママさんの写真もある。(ご本人は「3年前だし今より顔が若い」と照れていらしたけど)

ビジネス・レーバー・トレンド2004年10月号
特集「在宅・SOHOワークという働き方~現状・課題・行方」

廿:FWORKが下火になって、ほかのフォーラムと合併したでしょう。その後シスオペをされたハンドルネーム孔明志さんに以前お尋ねしたら、FWORKは93年当時にmiikoさんが作られて、「在宅ワーク」っていう言葉自体を作られたのもmiikoさんだと聞いている、とおっしゃってました。いつかmiikoさんにそのころのお話を伺えたらなと思ってるんですよ。

卓也ママ●今どういうお仕事されてるんでしょうね…。
在宅ワークの歴史的な研究で一番権威があるのは、JILの神谷(かんたに)隆之さんですね。在宅ワークのことを学術的に研究してるのは、神谷さんとスピンクス先生(東京理科大)や法政大の諏訪先生などがいらっしゃいますね。

廿:この座談会記事の中に、80年代の第1次SOHOブームって書いてあるでしょう。それって具体的にはどういう…?

卓也ママ●私もそれはわからないんですよ。80年代って私たちまだ新入社員だし。

廿:たぶん、そのころに言ってたSOHOっていうのは、ニューヨークのソーホー地区で芸術家がアトリエ兼住宅みたいなところに住んで創作活動を、みたいなのですよね。それは手塚治虫とかの漫画家が住んでたトキワ荘で(笑)、今のSOHOにあんまり関連はしてないんじゃないかっていうイメージを、私は持ってるんですよね…。

SOHOとは違うけど、入力分野では、私がパートしていた入力会社は1982年の創業。それ以前も、印刷会社を結婚退職した人などが機材を貸与されて自宅で作業することはあった。当時、本人たちは「入力の内職をしている」と表現していたらしい。

最後の在宅ワーク本

今日は本や雑誌の話題。
出版業界は、そのとき流行している「売れる」内容を各社一斉に出す。パクリと言われようが気にせず、二匹目、三匹目のドジョウを狙う。だから、何が出版されているかを調べると、在宅ワークやSOHOをめぐるその時々の世相がよくわかる。

廿:アマゾンで「在宅ワーク」って検索すると、最後の在宅ワーク本は2003年秋の出版で、ほかならぬ私の『ゼロから学ぶテープ起こし』なんです…。「SOHO」で検索すると、最後のSOHO本は2006年秋に出て、今年に入ってからは1冊も出てない。

今年6月にアマゾンで検索したとき、大ざっぱだけどリストを作ってみた。(エクセルファイル)
在宅ワーク本リスト  SOHO本リスト

卓也ママ●『月刊SOHOコンピューティング』は、創刊号(1997年)から全部持ってます。何かのときに使えると思ってるんだけど、もう「何か」もなさそう(笑)。この雑誌、途中でアフィリエイト雑誌に変わって、それも結局この間終わっちゃった。

廿:そのまた途中では『SOHOドメイン』って雑誌名でしたよね。
SOHOの本は、98年ぐらいが一番出ているんです。なんと年間34冊。一番古いSOHO本は96年。どんなこと書いてあるのか今度見てみようと思ってます。

卓也ママ●私が読んだの、一番古いのは何だったかな…。それにしても、『パソコン主婦の友』(1996-2006)と『女性のパソコン』(2000-2003)は、やっぱりよくできてたと思いますよ。

廿:うん、『女性のパソコン』も頑張ってはいたんだけど、広告が集まらなかったみたい。

デザイナー向け雑誌などは、彼らが使う機材やソフトの広告が掲載できる。入力系の在宅ワークだと大した機材やソフトが必要ないから、通信教育講座の広告ばかりになってしまう。しかもそのころはもうブームが過ぎつつあって、通信講座自体が減っていた。
それにしても、卓也ママさんの読書量や幅広い知識には圧倒される。

卓也ママ●(リストを見ながら)「この人の本はたいてい図書館にある」「この人には2、3回会ったことがある」「やっぱり笠松ゆみ(初期の出版物では山口ゆみ)本は名作だと思う。注意が必要な漢字一覧とか出てたでしょう。よくまとめたなと思った」「これも持ってる」「ここらへんから全部持ってる」「上田光子さんの『エクセルで始める在宅ワーク』は初心者に勧めてる」「これはJILの神谷さん」「これ読んだ」「あ、廿さんの本。これ、あと2年早かったらバカバカ売れてたかもしれない」

廿:うん、出遅れた。テープ起こし通信教育の悪徳商法が摘発だったあとだったから。

卓也ママ●うちにはこのジャンルの本・雑誌はたくさんあるから、必要なものがあったらいつでも言ってください。

(卓也ママのおまけ)
本、結構人に貸してるのが多くて、手元にすぐあつまったのがこんなんと

Img_7515_320 
「パソコン主婦の友」や「主婦のパソコン」などなどの本棚の写真をちょっとだけ。Img_7518_320 

勤め続けるつもりだったのに

卓也ママ●廿さんって結婚退職ですか? 出産退職?

廿:私はその中間。ちょっと人間関係の悪い職場…人間関係なんてどこでもよくないですけど、「こんなところにいたら子供ができない!」とやめちゃった。でも、やめたときにはもう、実は子供ができていた、あとからわかったんだけど(笑)。

卓也ママ●私は本当は勤め続けるつもりだったんだけど、切迫早産で、会社から病院行ったらそのまま入院、結果3週間入院になっちゃったの。出産後はいずれ戻りたいとも思ってたんだけど、夜中の2時まで仕事をするようなこともあったから、やっぱり体力に不安があって。

廿:SEは長時間労働なんでしょう?

卓也ママ●いや、やり方にもよるんですけどね。会社で私がやってたのは、人工衛星の画像解析。発電所から排出される水、温排水っていうんですけど、それがどの程度まで広がっているか、漁業アセスメントの関係で観測が必要なんです。漁船がセンサーをつけて、海面を細かく往復して観測してたんですけど。それは大変だから人工衛星のセンサーでどの程度合うかっていうのを研究してたの。

廿:じゃあ、卓也ママさんって理系なんですか?

卓也ママ●それがわかんないの。大学は情報学部です。理系のつもりで入ったんですけど、分野的には社会学なんですよね。理科の先生の免許を取るのもいいなと思ってたら、うちの学部は社会しか取れませんっていうから、教職はやめた。

廿:社会学の中に情報処理があるのか…。

卓也ママ●文部省(現・文部科学省)の認可の関係でそうなったらしいんです。
卒業後は教授の紹介で情報処理の会社に入って、ダンナ見つけて結婚して。いい会社なので、やめた女性社員って私以外に1人ぐらいしかいないんですよ。社内結婚が多いんだけど、みんな夫婦そろっていまだに正社員だから、いいなあ、すごいお給料もらってるだろうなあ(笑)。

廿:妊娠経過が順調であれば、正社員のままでいられたんですね。その会社は昔から、お子さんが小さいときの短時間勤務制度とかがあったわけですか?

卓也ママ●ないけど、その代わり2年ぐらい育休が取れるのかな。地元の会社なんでみんなクルマで通ってて通勤が楽だし、転勤のおそれもない。でも定着率がいい分、新入社員が入らないから、会社の未来はどうかな…(笑)。

赤ワインの乾杯から始まった昼食は佳境に入っている。ラムのローストもおいしいし、トマトのファルシーサラダもおいしい。

それにしても、妊娠の経過というのはその人の日ごろの体力や持病とは関係ないから、全く予測できなくて困る。女性の職業生活は、そういうことで変わってしまうのだ。

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卓也ママさん3

会社時代の経験が生きている

卓也ママ●会社時代、大手町にあるシンクタンクに2カ月ぐらい出向で通わせてもらったことがあるんです。そこでは仕事(画像解析関連)の勉強をさせてもらって、なおかつトップクラスのシンクタンクの人たちの働きぶりとか、仕事の仕方なんかを見て、「すごい、うちの会社と全然レベルが違う!」。入り直せるものならとも思ったけど、「修士の人じゃないとだめ」って言われて断念したの。
私は大学院がない大学に行ったせいもあって、会社に入るまで修士という言葉を聞いたことがなかったんですよ。マスターって何? ドクターってお医者さんのことじゃないの?って。

廿:私も、修士や博士を取るのって大学に残って学者になる人なんだと、以前は思ってた。

卓也ママ●ところが、いざ実際自分が仕事をしてみると、東大や京大のマスターやドクターを取った人たちがぞろそろいるわけですよ。人工衛星解析に関しては私のほうがわかってるから「こうやってください」と言うと、「じゃあパラメータをこういうふうに計算しましょうか」と、彼らが専門的に考えてくれる。仕事は面白かったから続けたかったけど、でもまあ、やめたらやめたでね(笑)。

廿:そういう仕事に比べちゃうと、代わりの仕事はどれもこれもやりがいがないですね。

卓也ママ●ううん、そんなことはない。それに、会社時代の経験が生きてますから。ちょうど大型汎用機からパソコンへの移行期で、ワークステーションが会社に入ってまだ専門分野が定まっていない私が担当になったり、パソコンだネットワークだっていう段階になったころまでいたんです。

廿:そういう時代的な変遷をだーっと経験してきたっていうのは、うらやましいですね。

卓也ママ●パソコンの変遷は全部わかる。わかったからってどうってことはないけど、得はしてるかもしれないですね。なんでコンピュータがこういう手順で動くかとか、なんでメモリが足りないとプログラムが動かないのかとか、いろいろなのを扱ったので、そういう基本的なことが見えているんです。

廿:私はそういうバックボーンがないから、本当に困るんですよ。入力をやってればいいだけだから困る必要ないんだけど、自分では困ってます。

卓也ママ●うん、入力には全然必要ないんですけどね。私は入力よりデータの整理とかとりまとめが最近多いので、例えば十万件のデータをきちんと整理するにはどうしたらいいか、手で全部直すのは無理だからマクロを組んだり関数を組んだり、ちょっとしたC言語のプログラムを書いて処理したり。そういう対応ができるから重宝がられてるんだろうなと思うんです。

体力より調整力で勝負する世代

廿:この仕事で長くやっていこうと思えば、何か専門分野(あるいは2本目の柱)を持つ必要があると思うんですよ。入力ができてデザインができるとか、入力ができてプログラミング系ができるとか。入力一筋にやるっていうのは、ものすごく体力勝負になる。

卓也ママ●そう、もう年齢的に体力では勝負できないと思う。私は97年に下の子を産んで、背中におぶいながら入力とかしてたけど、今じゃとても無理。

廿:私も98年に下の子を産んでるから同じぐらいですよね。子供を寝かせてから自分は起きて、真夜中に仕事することもできたけど、今となっては…。

卓也ママ●集中力が全然上がらないんですよ。やるときはやるしスピードも出るんだけど、そこまでのアイドリングが長い(笑)。

廿:まあ、それが中年の働き方というか。だから普通の会社では、そのぐらいで管理職になるわけでしょう。走り回るほうはもう自分ではだめだから、脳みそで人を使う。ただ、私たちは管理職といっても部下がいない。

卓也ママ●でも、調整能力はついたかな。「こういう仕事があるんだけど、誰か探してくださいよ」とか頼まれません?

廿:人を紹介したりとりまとめたりすること、ありますね。

卓也ママ●在宅ワークをしてる人には昭和39年生まれ、多いですよね。私と廿さんと、さくさく堂さんもそうだし。たんぽぽさんは40年?

廿:40年だけど早生まれだから学年は同じ。この世代のために在宅ワークはあるみたい(笑)。

卓也ママ●それは思いますよ。均等法世代で、女性でも働け働けと言われて、そのくせ、子供ができたら家にいなきゃだめっていう呪縛があった時代。うちは長男が93年生まれなんだけど、「たまごクラブ」と「ひよこクラブ」ってその年の創刊なんですよ。私、買いました(笑)。世の中に公園デビューという言葉が登場した。

廿:うちは長女が94年生まれ。そういう時代でしたよね。

卓也ママ●でも考えようによっては、出産でやめられたいい時期だったのかもしれない。若い世代はもっと状況が厳しいですよね。

・体力と集中力は個人差が大きくて、もっと年上でバリバリやってる人もいる。私はもともと体力がない。

・さくさく堂さん…在宅ワークにも派閥みたいなものがあるという話題が出た(7/23の記事)けど、彼女は派閥横断的に人脈が広い。ブログさくさく堂のシナプスな存在はオススメ。
・たんぽぽさん…谷頭千澄さん。SOHOWORKネットのオンライン講座でテープ起こしコースを担当していた。このテープ起こしコースがヒットして、笠松さんがほかのコースもやりたいねと言い出したとき、私を文字入力コースの講師に推薦してくれたのがたんぽぽさんだった。

手を広げるぐらいならパートに出るほうがまし?

廿:入力が好きな人は入力が好き、テープ起こしが好きな人はテープ起こしが好きなんですよ。そういう人に、プログラム系でもデザイン系でもライター系でもいいから、何か専門をもう一個持ったら?って言っても、本人が納得しない。

卓也ママ●私が頼んでるすごく入力の速い人も、やっぱりそういうタイプ。ライティングの手伝いもしてもらったことがあって、きちんとできるんだけど、無理をして手を広げるということはしないですね。いまのところ、入力だけで仕事は来るし、まわってるから。

廿:入力の好きな人は、ほかのことをやりたいという気持ちがあんまりないみたいなの。でも、たとえ仕事量が多くても、下請けで稼げるお金はどうしても限界がある。そうなると結局はパートに出ちゃうでしょう。

卓也ママ●子供の手が離れたら、絶対出るよね。つまり、おいしい仕事を知らないのかな。

食後のコーヒーとデザート、到着。

廿:多い月はそこそこ収入になるにしても、入力系はどうしても繁忙期と閑散期の差があってお金の入らない月がありますからね。

卓也ママ●2月3月は本当に忙しい。もっとばらけて来い!みたいな(笑)。

廿:年度末を乗り切れるかが一番キョーフですよね。大口のテープ起こしを打診されて、「春休みなので人手が確保できません」って断ったことがあります。
でもこの間、すごい技を教わった。エンドユーザーさんがお役所系で、どうしても年度内に予算を使わなきゃいけないって言われた人が、お金を先にもらって、仕事は4月になってからゆっくり納品したって。

卓也ママ●あ、そういう場合もありますよね。向こうとしては年度内に領収証が欲しいから。ちゃんとやるだろうという信頼関係があれば大丈夫なんじゃないですか。

廿:そうか…。できないって断ったのはもったいなかったな。

お金を年度末にもらっておいて、仕事は年度明けからとりかかるような方法って、私が知らなかっただけで案外常識なのかもしれない。

それと同じように、デザインとかプログラミングなど敷居の高い仕事(←入力者にとって)以外に、入力系でもちょっとした技術で稼げること自体、知らない人は結構いるのかもしれない。
卓也ママさんの「おいしい仕事を知らないのかな」というのはそういう意味だと思う。ちょうどそこでコーヒーが運ばれてきて、会話の流れが一時中断しちゃったんだけど。
笠松ゆみさんも、セミナーではよく「入力は、仕事の大きな流れのほんの一部で、その先がこんなにあるんです、そこに目を向けましょう」と力説していた。

自分が楽しく、お客さんに喜ばれる仕事

卓也ママ●たまに外へ出るのって、雑誌の吊り広告とかを電車の中で見られるのが楽しいですよね。

廿:それは思います。

卓也ママ●もう子供もだいぶ大きくなったし、どこかお勤めしたほうが楽かもしれない。でも今の仕事形態をやめない理由って、いろんな時間にいろんな所に行ってみたいという欲求が人より強いせいもあるんです。
午前中に電車に乗るとおばちゃんばかりで、遅くまで仕事をして帰ってくるとオヤジばかりとか。神田駅の西口はオヤジしかいないのに、すぐ近くの小川町あたりは学生ばかりとか。いろんな時間にいろんな会社に行って仕事することで、そんな観察もできますから。

廿:外に出ること、多いですか?

卓也ママ●昔より少ないです。でも月に2回ぐらいは東京に来てる。
在宅の仕事じゃないんだけど、ある会社の顧客管理システムを手掛けてます。食品のWebサイトで、HTMLを誰かに頼んだり、プロモーションをしてもらったり。私自身がやるのは、サーバー選びとかメールの設定とか、アクセス解析をしてレポートを出したり。

そこの会社はもう7年ぐらいお付き合いしてます。FileMakerProができるというので紹介してもらったんです。最初は1年ぐらいかけて、まずシステムを作ったのかな。
企業が作ると何千万円もかかるけど、私なら桁が二つくらい違っても遜色ないものができて(笑)、そういうので重宝がられてる。でもそのへんのデータ入力よりはやっぱり単価もいいし、自分の技術も生かせるし、お客さんに喜ばれるから。

廿:じゃあ、正社員だったやりがいのある会社はやめたけれども、やっぱりやりがいのある仕事にはついてるってことですね。

卓也ママ●うん。やっぱり楽しい仕事がしたいですよね。自分が楽しい仕事、そしてお客さんに喜ばれる仕事。
講演をテープ起こしして記事にまとめる仕事がたまにあるんだけど、これも好き。私は、講演当日にノートパソコン持ってって、会場で聞きながらほとんどまとめちゃうの。録音テープはもらわなくてもいい。自分の入力スピードが生かせるし、作業時間が短いから結果的にお金もいいし、早く納品できてお客さんにも喜ばれる。

きのう話題になった「おいしい仕事」の一つは、こういうものかもしれない。私も似たような形態の仕事がたまに来るけど、すぐできて簡単で面白い。全然違う分野に進出する抵抗感に比べたら、こういう「今の仕事に付加価値をつける」路線のほうが、入力者にはお勧めかも。

おまけコラム「おいしい仕事」(卓也ママ)

あのときなんで「おいしい仕事」っていったのかは思い出せないけど、一緒に食べたラムの味はまだ覚えてる、また行きましょうね。ウフフ。という話ではなくって、ペシ!

入力系の仕事はどうしても作業の末端の末端であり、しかも中間マージンが発生すればするほど、金額的には「ウッソー!!」と叫びたくなるような状況になりがちです。自分の懐を豊かにするためには、まず実際のクライアントと直接連絡のとれる立場になること。そのほうが、金額的なことよりも、自分が何の仕事をしてそれがいかに役にたっているかを知ることができるから。一つの作業が終わってもそれだけでなく、付随したさまざまを手伝う機会も増えるので、仕事が途切れる心配がなくなります。

それに、どうしても個人作業になりがち、家にこもりがちな在宅ワーカーに、カツをいれてもらえますもの。東京に仕事で打ち合わせとなったら、それなりに、服を選んだり、身づくろいに気をかけるようになります。
私のもっかの目標はいまあるスーツを着続けられるように、体型を維持することでしょうか(笑)。ああ、加齢による基礎代謝の低下に負けそうです。

コミュニケーションスキル

卓也ママ●私、会社時代もそのあとも、あんまり仕事の人間関係で苦労したことないんですよ。虐げられててもわかってないのかもしれないけど(笑)。ホント、まわりの方に恵まれて今に至る。

廿:仕事ができる人は「まわりの方に恵まれて」と言うそうです。そうでない人は、まわりの人に恵まれないから愚痴ばかりなのか、自分が愚痴ばかりだからまわりの人に恵まれないのか、わかんないけど。

卓也ママ●「それ言ったら仕事こないのは当然」っていう発言をする人、たしかにいますからね(笑)。
でも私は全体にまわりの人に恵まれてきたので、人が好き。ホームオフィスナビの掲示板も楽しかったし、自分のブログにコメントつくのもすごく楽しみ。
アクセス解析をつけておくと、このコメント書いてる人はどこからアクセスしてるか、どんな時間帯に来てるかとかからわかるから、その人にしかわからないような書き方をすると、100パーセント、レスが来る(笑)。そういうのは得意。

そうか、アクセス解析ってそういうふうに使うものなのか…。ブログにもともとついてる機能でさえ、前日のアクセス数しか見てない私。

卓也ママ●でもそういうコミュニケーションスキルみたいなものって、個人レベルの仕事では役立つけど、たぶん会社レベルの仕事では役に立たないと思う。だって会社って、むしろ個人の判断で動いてはいけないじゃないですか。特にこれからJ-SOX法とかで、社内の情報管理が厳しくなりますからね。

廿:J-SOX法を導入する企業は大変そうですね。

卓也ママ●大変だと思う、あれは。
今も、仕事先にメールを送るときは、個人情報とかお金に関わる内容は暗号かけてやりとりしてます。でもその中でJ-SOXに一番ひっかかる会社は、グループウェアでメールを読んでるから、メール自体を暗号化して送るとはねちゃうの。

廿:あ、なるほど。

卓也ママ●だから、添付ファイルに暗号をかけておいて、開けるときにパスワードを入れてもらうようにしてます。
最近、セキュリティー関係で相談を受けることがすごく多くなりました。「うちの会社は今こうなんだけど、何かセキュリティー的に問題はあるかな」って。でも、一番問題なのは社員のモラルですよ。社員にデータ持ち出されるのが、一番危ないもの。

廿:あはは。

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卓也ママさん4

メンバーは地元でスカウト

廿:卓也ママさんはわりと地元密着ですね。

卓也ママ●すごく地元密着。静岡県に数人メンバーがいるけど、私はそっちに姉がいるから彼女たちにも毎年会ってるし、それ以外はほぼ100パーセント地元の方ですね。自分がこういう仕事をしているといつも言っているから、「○○ちゃんのママがMOTを受けたらしいよ」とかいう情報が入ってくる。
その方をスカウトしたら、「私なんかとても…」って言ってたけど、優秀なインストラクターさんになってくれました。今は市役所のパートに出てしまったんだけど、市のホームページの更新を担当してます。

廿:活躍してる。そうならなくちゃねって感じ。

卓也ママ●そう、みんな出世しちゃうの。私、そういう人を結構見つける。自慢にはならないけど、地元民をスカウトする力はすごいよ(笑)。

廿:それは自慢になりますよ! 私、ザイニュー以来ずいぶんいろんな人に話を聞いてきたけど、そういう形態でうまくいってるケースを聞いたのは初めてです。地元志向で始めても、地元としてはふくらみきれずに、結局九州のグループに北海道の人が入ってたり、その逆とかが普通みたいですよ。
そうなると、PTAの役員もパワーになるわけですね。人脈が広がるって意味では。

卓也ママ●PTAはいいですよー。ただし、やるなら中途半端な位置はダメですね。バザー委員長とかになって、自分のやりたいように、自分の仕事のスケジュールに合わせて日程を決めちゃうほうが、かえって楽。

廿:「PTAの顔」って人、どの学校の保護者の中にも自然にできてきますよね。

卓也ママ●うん。私、自分がこういうタイプだとは全然知らなかったんですよ。前はもっと地味だった。自分がこんなにしゃべるタイプで、人前で講演したりするとは思わなかったの。変わったのは子供産んでからですね。

廿:子供を産むと…なんで?

卓也ママ●コミュニケーションしなきゃいけない人が増えたから。子連れで公園に行って、不特定多数の人とあたりさわりのない会話をしなきゃいけないでしょう。そういうコミュニケーション能力は、私は主婦というものになって磨かれた。

廿:主婦になって磨かれたというのは面白いですね。

卓也ママ●一度会社やめて家庭に入ると楽しいよ、と(笑)。いろんな人に会えるしね。自治会も子供会も役員をやったし、民生委員やりませんかって話まで来ちゃって。さすがにそれはお断りしました。

技を引き継げる人いないかな

卓也ママ●仕事って、自分がやるのが一番早いし確実なんだけど、それじゃ追いつかないというか、体力がもたないから(笑)、誰かに託さないと。早く隠居して、普段は何もしないで、何かあったとき呼ばれるようなのがいいなあ。

廿:でもそうするには、とりまとめる人が必要なわけですよね。それって難しくないですか? 作業者は育てられるけど、まとめられる人は…。

卓也ママ●なかなか育たないね、まとめる人。でも結構私のまわりでは育ったかな。お手伝いしてくれた方は、今ではみんな自分で仕事を取ってきて、下にまた5人ぐらいメンバーがついたりしてます。今度はその人から仕事をいただいたり、なんていい世界だ!と自分でも思う。本当にいい人ばっかり揃ってたわ。

廿:人をとりまとめるスキルって、対面で教えなきゃいけないでしょう。呼びつけて時間を拘束するなら時間給を払ってほしいって要求されることが、よくあるみたい。卓也ママさんは地元密着だからそこをクリアできたわけですね。

卓也ママ●うちのメンバーではいなかったけど、そういう人っているらしいね。募集して応募してきた人だと、そうなっちゃうんじゃないかな。だって当然、お金をもらえるから仕事をしましょうっていう関係なわけでしょう。私は、仕事のメンバーの前に、まずお友だちだもん。
今は、まとめる人よりむしろ、技を引き継げる人が誰かいないかなと思ってるの。

廿:卓也ママさんなみにできる人なんて、めったにいないですよー。

卓也ママ●ピボットテーブルとかが好きな人。でも、ただエクセルでピボットがかけられればいいっていうことではなくて…。

廿:つまりそこへ行くまでの設計というか、そこにそれが必要だと判断する能力と経験が必要なわけでしょう? どれを縦に、どれを横に取れば、いい結論が出るか。マニュアルに手順が(1)、(2)…って書いてあればピボットテーブル作成自体は誰でもできるけど、その手前の設計からできる人ってそんなにいないですよね。

卓也ママ●私、会社員時代に解析的な仕事をしてたんですが、「このデータはこのグラフにして何の意味があるんですか」「このデータは本当にあなたが証明しようとしている事象を表わすデータなんですか」って追及されながら鍛えられた。
何パーセントの信頼性があるとか検証してデータを使うものなんですけど、「ちゃんと検証しましたか」って突っ込まれて、また大学の統計学の教科書引っ張り出したり、高校の数Iの教科書も常にそばに置いてた。
高校と大学で教わったことって、こんなに役に立つんだ!って意外でしたね。

やっぱり子供の教育

卓也ママ●(ここらへんは情報処理の話。むずかしいので省略)それで流体解析では…、×××ってやりましたね、数IIか数IIIで。

×××は数式で…。仕事で請け負ったテープ起こしなら、泣き泣き何度も聞き直したり調べたりするんだけど、今回はいいや(笑)。卓也ママさんによると、「微分で dx/dy = で…」というようなことを言ってたはず、とのこと。

廿:やったはずです、たぶん。私は文系だけど、うちの高校は当時、文系でも数IIIまで必修だったんです。私の翌年から、文系は数Iだけでよくなった。

卓也ママ●私たちの2年下になると、数学の教科書が「代数」「幾何」とかに変わったじゃない? 数IIIとか言っても通じないよね。

廿:うん。文系なのに数IIIまでやらされて、私には全く無意味な時間だった。何もわかんなかった、数Iもわかんなかったんだから。でも、高校の数学って、人によっては社会に出てからかなり役に立ってるんですよね。

卓也ママ●この前、上の子の中学で授業参観だったんですよ。授業を見てると、「こんなの使わないと思ってるかもしれないけど、あんた将来使うかもしれないんだよ」って子供に言いたくなりますね。その授業は歴史で、承久の乱のところだった。はい、承久の乱とは?

廿:ナントカ上皇でしょ、ああ、後鳥羽上皇だ。

卓也ママ●よく覚えてる!

廿:私、自分の子供には、「あんたは私と同じく理数系で生きていくのは無理だから、社会科は端から端まで覚えなさい」って言ってます。

卓也ママ●子供の勉強のことは頭が痛いというか、結構真剣に考えちゃいますよね。

廿:うん。結局は学校の勉強というのは役立つものだから。どこが役立つかはその人の職業によると思うけど…。ちゃんと身につけさせたいと思いますよね。

卓也ママ●私らが死んじゃったら、自分の力で生きていかなきゃいけないんだし。上の子はやっぱり大学までは行ってもらいたいし、勉強はそれなりにさせておきたい。下の子は生きる力はありそうだけど。
親は教育しか残せないよね。私たちの仕事だって、いつどうなるかわからないじゃない? 仕事先でデータ漏洩…なんかしないつもりだけど、何かの間違いで漏洩しちゃって損害賠償だなんて話になっちゃったらねえ。個人で怖いのはそこですよね。

廿:本当にそれは怖い、私もよくそう思います。

最近、同業者と会って盛り上がるのは個人情報保護法に関する話、それと子供の教育問題。赤ん坊を抱えて在宅ワークを始めた私たちが、子供の教育に頭を痛める世代になったってことでもあるんだけど。
食後のコーヒーも飲み尽くして、その2つの話題で盛り上がりながら、対談は終わり。

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卓也ママさん5

対談を終えて

(卓也ママさんからメッセージをいただきました)

廿さんと初めてリアルでお会いしたのはいつかなあと家にある資料をかき分けていたらこんなのが出てきました。

Saitama_2

これが6年前のこと。その後もいろんなセミナーでお顔をあわせる機会もたびたび。いやー、顔が広い! 守備範囲が広い!と思っておりました。
じっくりとお話したのは今回が最初でしたが、不思議とお互いのことは分かってしまうのがネットつながりのいいところ。同じ時期に出産・育児を経てきたこと、そして“在宅ワーク”を進めていくために、数限りない工夫と努力を重ねた同士だからでしょうか、話が全く途切れませんでした。軽く3時間くらい話しっぱなし。テープ起こすの大変でしたでしょう。すみませんね、おしゃべりさんで (*^ - ^*)ゞ ポリポリ

今回「おまけ」文章や「写真」などもそのまま載せていただきありがとうございます。
在宅ワークに関しての資料と書籍類、今となっては情報が古くなって役に立たないものも多くなってしまいましたが、ブームの渦中にいた者として、当時の様子を伝える機会を作っていただいたことに感謝します。

対談を終えて2

 本当ならお盆休みに入る前に、卓也ママさん・私それぞれの「対談を終えて」まで掲載してしまう予定だった。そうならなかったのは、私がまたまた今年も夏ばてしたせい。対談後の恒例にしたいと思っている、対談者をお招きしての交流会もちょっと延期、9月上旬か中旬を予定。いずれ告知を出しますので、どうぞよろしく。

 ザイニューの対談シリーズは、5月は入力グループのリーダーという立場から畔見さん、6月がテープ起こしのメンバー的な立場から文月さんのお話を伺ったので、今回はぐっと視点を変えた話題を…と思っていた。
 ちょうど卓也ママさんからメールをいただいたので、在宅ワークの歴史とか行政の動きなどを伺うならこの方!と思いついて、お願いしたら快く引き受けてくださって、感謝。

 私が作った「在宅ワーク年表」もながめながら対談が進行した。「それが、このへん」「ああ、そんな流れでしたよね」というような会話だったのだけど、この年表は大ざっぱで、まだちょっと公開できるようなものではなくて…。いずれ内容を充実させて掲載したいと思っている。

 対談当日から連載終了まで時間がかかっている間に、いろいろなことがあった。なので、明日から数日はその話題。

対談を終えて3

 対談当日から連載終了まで時間がかかっている間に、いろいろなことがあった。

【いろいろなこと、その1】
 例えば、7/23の記事に登場するいろいろなお名前は、記事内でなんとなく「在宅ワーカー系」と「社長さん系」に分類されている。その中の宮田志保さんが会社を設立して「社長さん系」に移動された。株式会社エフスタイルの代表取締役+NPO法人フラウネッツの理事長、ということになる。
 宮田さんが会社設立中であることはご本人から伺っていたのだけど、対談時点では設立期日を知らなかったので、話題にしなかった。

 余談ながら、こういう活動形態では、顔が2つ必要になることが多い。私も、企業に向けて「四月堂」、同業者に向けて「月刊在宅入力者」と、2つのWebサイトを持っている。名刺は2枚持ったり、1枚の表と裏を四月堂とザイニューにしたりしている。

対談を終えて4

今回の対談について紹介してくださったブログ記事(日付順)
(1) SOHO/在宅ワーカーのためのブログ ambitious SOHO! 7/23の記事
(2) さくさく堂のシナプスな存在 8/13の記事
(3) テープ起こし(録音反訳・音声反訳)、在宅ワークの現場から/ぺんぎんの濁流 8/16の記事
(4) テープ起こしを仕事にして 8/17の記事

 皆様ありがとうございます。ブロガーさんたちをざっとご紹介。
 (1)はフラウネッツ宮田さん。
 (2)は、さくさく堂さんならではの分析とビミョーに鋭い突っ込み。「いや~、もっと会話は輻輳してんでしょ」ってねー、あはは。できるだけ会話のままと思いながらも、やっぱり多少は前後の話題を入れ替えたり、整えたり削除したりはしております。
 (3)は、(2)のさくさく堂さんブログと私のブログ両方を受けての記事。大阪在住の日本ぺんぎんさん(+所長さん)とは、せっかくお会いする機会があったのに、そのときWeb版ザイニューの決心がついてなくて、取材できなかったのが残念!
 (4)のフルセイルさんとは、フルセイルさんの記事にあるセミナーでお会いして以来、テープ起こしをお願いしていた時期もあれば、自主制作本の作業部会に来ていただいた時期もあり、長年お世話になっています。

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