2007年5月号畔見さんとの対談3

どかどか重なった仕事をこなすには

畔見●データ入力の会社にいたときに、いっぱい来る仕事の流れ作業的なスケジュールを組んで、みんなに「じゃあ、これやって」っていう管理をしてたんです。だから私、結構仕事の組み立てはできる、パンパンと詰めて時間を作ってやれるらしいんです。時間っていうのはパズルみたいなもので、うまく合致すると全部が埋まる。ちょっとずれちゃうと完成しないでしょう。

廿:なるほどー!

畔見●日にちや時間ってみんな平等に持ってるようだけど、それを工夫して、「カレンダーにない1日」を作り出せば伸びるんです。例えばメンバーに分割納品してもらえば、全部いっぺんにまとめてやってもらうよりも、自分が早く検収に入れるから、1日多くあるような感覚になるんですよね。

廿:それとはちょっと違うけど、入力会社にいたとき、ホワイトボードに在宅さんの名前が一覧表になってて、今誰に何が出してあるか書いてあるんです。忙しいときは全員に仕事が出てるし、優秀なメンバーには一度に2つの仕事が出てたりする。だから営業さんは新規案件の電話を受けたとき、ボード見て「どうする? 断る?」って言うんだけど、チーフは「大丈夫です、なんとかします。受けてください!」って。

畔見●すごい。

廿:それで、本当になんとかしちゃうんです。ホワイトボード見て「ああ、この人もう終わってるよ。ちょっと電話してみる」って。納期が何月何日ということにはおかまいなく電話して、「あと1件入らない? 今日何時ごろ終わる? じゃあ取りに来てね。お願い、あなたが頼りだから」。この気迫ですよ、大事なのは。

畔見●たしかに…(笑)。管理者がてきぱきしてくれると、ついていけばいいって安心感がありますよね。

廿:そう。だから覚えますよね。これほど入ってるのに、まだ入れられるものなんだ!って。私なんか、単純に「この人にはこの納期で出してあるから」って引っ込んじゃうんだけど。

畔見●でも、今の作業者ってギリギリまで納期あげると本当にそのペースでやるから。終わってるかなと思うと「まだやってます」。

廿:私も最近取りかかりが遅いから、耳が痛い。

「忙しい、もうこれ以上仕事は入れられない」と思ったとき、まだ入れる方法2種類。きっちり組み上げる畔見さん方式と、強引に押し込むチーフ方式。

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データ入力はプチ稼ぎとパートの中間

廿:入力にしろテープ起こしにしろ、この仕事の志望者が在宅ワークブームのころみたいに増えるってことは、もうないと思うんですよ。いっぱい稼ぎたい人は外へ出るし、家にいてちょっとお金が欲しい人には、株式プチ投資とか懸賞応募とかがある。データ入力のライバルはテープ起こしじゃなくて、たぶんそういう「プチ稼ぎ」系なんです。

畔見●アフィリエイトとか。

廿:うん、アフィリエイトも、頑張れば月何万円かになりますから。

「月500円にもならない」という話も聞くけど、アフィリエイトにだってコツはある。でも案外労力がかかって、入力で稼いだほうが手っ取り早いのでやめた。

廿:それに今、パートの時給が上がってるでしょう。みんなちょっと無理してでもパートに行っちゃうだろうと思って。

畔見●行っちゃいますよね。この間、定期案件をやめた人の代わりにお願いした人も、前は在宅のみだったのに、今は週3日パートに出てるんです。それでもやってくれるって言ってくれてますけどね。でも、だから原点に戻っちゃうんですけど、初心者の人を育てるしかないんですね。

廿:うん。

畔見●ネットの掲示板とかで「初心者OKって書いてある会社とかは怪しい」っていう書き込みがあると、初心者の人が警戒しちゃって、なかなか来てくれなくなるから困るんですよ。こちらはいつでもウェルカム!なのに。

畔見さんは、意欲のある人には根気よく初歩から教える。ところが、ようやく戦力になるころに相手がやめてしまうことがある。相手にしてみれば、どんな仕事かよくわからず入ってきた(経験がないのだから当然だ)けど、わかってきたら自分の希望するような仕事ではなかった、ということなのだろう。
そんな「教え損」経験にぶつかりながらも、未経験者でも育てようと思っている畔見さんにとって、「初心者OKなどという会社は悪徳商法に決まっている」と決めつけるネット上の意見は本当に困るのだ。

廿:いつでもウェルカム!って言うと、「1カ月の最低保証額はないの?」とか聞かれません?

畔見●言われますね。有限会社のときは言われました。

廿:私も、それ言われたの入力会社のパートのときです。「会社」ってそういうイメージなんでしょうね。

畔見●有限会社にする前、在宅ワークグループをやってたとき、私すごい苦心して私いろいろ制度を作っていたんです。仕事を複数重なってやってくれた人にはボーナスをつけよう。3つ重なったら1カ月1,000円出します、4個重ねてくれればまた1,500円つけますってしたんですよ。…でも、誰もやってくれませんでした。

廿:なぜだろう。そういう無理をするぐらいだったら、もうちょっと無理してパートに出たほうがましってこと? それとも、それに耐えられる人は、そもそもグループリーダーになっちゃうのかな。

畔見●そうか、独立しちゃってるんだ。

実力がありながら独立を目指さない人というのは、仕事一つずつを落ち着いて丁寧に仕上げたいタイプが多い。そんな人にとって、「こっちもお願い」「あ、その仕事よりこれを先に片付けて」「でもそっちも急いで」とせかされることは、たとえ割増料金があっても嫌なのは当然かもしれない。

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葬式にも家出にも仕事がついてくる

畔見●つい最近、ダンナのおばあちゃんが亡くなって、2、3日行かなきゃいけなかったんです。で、向こうのホテルに仕事を持ってって、ダンナと2人で校正。

廿:能力の高いダンナさんでよかった(笑)。

畔見●しかもクライアントから「名刺の入力お願いしたいんですけど」って電話かかってきて、「…えっ、はい、わかりました」。

廿:そういうときに限って絶対仕事が来るんですよ。

畔見●こういう状況だから何日の何時まで不在ですって、メール連絡は入れてたんですよ。それを見ないで電話してきたみたいで、あとから謝られてしまいました。
結婚記念日でどこかに泊まりに行っても、必ず仕事持参なんですよー。豪華なホテルに泊まってるのに、原稿持参、パソコン持参、もう血相変えて。ルームサービスの人、「すごい修羅場だな、この部屋」って思ってるかも(笑)。

廿:私もね、去年の秋、長女の不登校のせいでちょっとうつ気味になって、家族公認で家出して鎌倉に1泊してきたんですよ。だけど、その直前に納品した集計データにミスがあったらしくて、鎌倉の海辺を歩いてるときクライアントから電話がかかってきた(笑)。

畔見●そんな、追い打ちをかけるような。

廿:しかも携帯にメール転送しておいたら、別のクライアントから「テープ起こしお願いします」ってメールが来た。せっかくの家出気分が…。

畔見●そういう運命なんですよね、お互いに。

廿:私、携帯メールで返事書くの大嫌いなのに! あのときの教訓っていうのは、携帯に接続するキーボードあるでしょう、畳んであって真ん中からパカッて開くの、あれを買うべきだということですね。「いつもお世話になっております」って書くぐらいでも、携帯って面倒くさい!

畔見●私、登録してあります。「携帯から失礼いたします」まで登録してある。

廿:携帯って単語登録できるんでしたっけ、ちょっと勉強しよう。それにね、私、家出はその一回であきらめました。

畔見さんのご主人は、「そんな人と、どうやって知り合ったんですか?」と質問してしまったほど、入力とは全然かけ離れた業界の人だ。にもかかわらず優秀な校正技術をお持ちで、しばしば畔見さんを手伝っているという。
ちなみに、畔見さんはメンバーから納品されたデータを全部、自分で再校正してからクライアントに納品している。これをやってるから、メンバーに対して正確なミス数を伝えられるわけだ。

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あなたも文字入力で1週間6万円!

畔見●有限会社のとき、募集を出しても全然誰も応募がなかったことがあるんです。ベタ入力で1週間ぐらいの仕事で、1文字0.8円だったんですよ。いっぱい応募が来ると思って、わくわくして出したら、シーン…。いくらだったら受けてくれるのー?

廿:この前、お客さんから0.75で受けて、うっかり0.75で出しちゃった。でも、当てになる人だったから、再校正しないで納品した(笑)。そのぐらいだから、私、0.8だったらやる!

畔見●やりますよねえ。でもそのとき、電話をしたらやるって言ってくれた人がいて、かなりの分量をお願いしたんですよ。その人、1週間で6万円ぐらい稼いでましたね。

廿:ってことは、1週間で6万字以上打ったんだ! 偉いなあ。私、最近無理がきかなくなって、徹夜はできないし、昼間でも無理すると次の日疲れて続かない。

畔見●私も今は無理だけど、以前半年ぐらい、1日2時間睡眠でやってたことがありますよ。

廿:ぎえええ!

畔見●慣れちゃうんですよ。頼んでいる人の作業時間ってみんなまちまちで、朝型の人、昼間やる人、夜やる人がいるでしょう。全部の質問に即答してたら「畔見さん、いつ寝てるんですか」って聞かれました。

廿:私にはできない…。

畔見●でも半年後、その仕事が落ち着いたらガクッときちゃって、寝る寝る(笑)。爆睡。

廿:体のほうは、それを待ってたんですよ。

畔見●1日に何時間ぐらい仕事されてるんですか?

廿:全然してないですよ。お昼寝大好きだし。午前中やって、午後は昼寝をして、夕方ちょっとやって、夜もちょっとやる。だからやっても7~8時間ぐらいかな。畔見さんは12時間ぐらいやってるでしょう。

畔見●やってない、やってない。私も今は8時間ぐらいです。

今日のタイトルは、わざと悪徳商法みたいな雰囲気にしてみた。でも、いい仕事にめぐり会えば、そして本人の能力が高く作業時間も十分取れれば、週6万というのはそんなに無理な数字ではない。(こういうおいしい仕事は多くはないけどね…それにしても、どうしてそのとき全然応募がなかったんだろう)

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仕様書にどこまで書くか

畔見●メンバーの希望って、例えば仕様書の書き方とかかな。

廿:仕様書?

畔見●仕様書の受け取り方って人によって違うなと思った一件があったんですよ。すごく細かく書いてほしいっていう人もいれば、そんなに細かく書かれたらわからないっていう人もいて。

廿:うう…。そんなこと言われたって。

畔見●MLで質疑応答をやってるんです。私は質問されたことに対して、もちろん答えも書くけれども、「それはこういう状況になっているから、こうなるんですよ」という説明も書いてたんですね。

廿:はい、それはいいですね。

畔見●そうしておけば応用もできるじゃないですか。ところが「それがうざったい」って言われたことがあるんですよ。質疑応答だから、質問に対して、できる・できないとか、そうです・違いますとか、それだけでいいのに、なんであんなにいっぱい書くんですか、それが混乱のもとじゃないですか!って怒られちゃって。

廿:大変ですねー。でも、好みの問題ではあるけれども、背景がわかるほうがいいですよねえ。

畔見●私もそう思うんだけど…細かすぎたのかな。その方は、プロ級でやってらっしゃるかたで、自分のメインのクライアントはイエス・ノーって短くはっきり言ってくれるからわかりやすいって。本当に人を使うのって難しい。

廿:応募人数の多い時代だったら、「これがうちのやり方なんで、よそを探してください」って言うことができたと思うんだけど、今となっては。

畔見●仕事はできるかただったんで、次にまた頼んだときはMLでなく個別に対応しました。まあ、それはそれで楽なんですよ。質問の返事には「やってください」「やらなくていいです」だけで。

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