ずっと入力業界の人

Web版『月刊在宅入力者』5月号は、約1カ月かけて畔見知子(あぜみともこ)さんと私との対談を連載する。畔見さんは、入力オフィスFour D's代表。高校卒業以来ずっと入力業界という、以前からお話を伺ってみたいと思っていたかただ。

データ入力系の仕事をめぐって、特にグループリーダーとメンバー(スタッフ)間の距離の難しさが繰り返し話題になる。それは、「会社の社長と社員」という明確な雇用関係ではなく、かといって「発注者と下請け作業者」という冷たい割り切り方のできる関係でもない。「プロ入力者同士の対等な取引」というには知識や意識やスキルの低いメンバーがいたり、かといってプロ意識の特に高いメンバーは自分のやり方を大切にするのでこれもお互いの関係が難しい。
私は、今データ入力を発注する相手が「約3名+まれに単発募集」と少ないため、以前勤めていた入力会社時代の経験を、畔見さんのケースと対比していることが多い。

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対談者
畔見 知子(あぜみ ともこ)
入力オフィスFour D's代表。埼玉県在住。

対談者の自己紹介と募集情報
1995年から在宅グループにてデータ入力の請負を始め、2002~2005年11月まで有限会社として起業しておりました(代表者の病気により廃業)。
現在は今のFour D's(グループ・個人事業主)に形態を戻し活動中です。

※Four D'sでは、全国各地で在宅入力業者(メンバー)の登録を行っております。
お仕事をコンスタントに出せる場合とそうでない場合がありますし、とても口うるさいオフィスではありますが(決まりが細かいです。特に報告・連絡・相談はうるさく言っています)、メンバー登録なさりたい方は是非ご連絡ください。
簡単なトライアルをさせていただく場合がございますので予めご了承下さい(無料です)。
※なるべく全てのメールにご返信をするように致しますが、業務多忙の時期はご返信がどうしても遅れてしまいます。その点ご了承いただきますようお願い致します。

お問い合わせは下記まで(画像になっています)
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グチ大会になるかも データ入力者オフ

廿:今度、データ入力系のオフ会でもやろうかと思ってるんですよ。テープ起こしの人同士はそれなりに交流があるんだけど、データ入力系はどうも交流が足りないから。

畔見●ぜひぜひ! でもすごいことになりそうかな。みんな口々に不満を言い出して(笑)。

廿:だけどお医者さんでも、産婦人科とか小児科とかはなり手が少ないっていうでしょう。開業してると別なんだけど、大学病院とかに勤めてるとあまりにも仕事が過酷で、そのわりにお給料が安い。

畔見●それって、データ入力の世界とかぶるところがありますよね。個人開業して企業から直接仕事を受注してれば別だけど、みたいな。

廿:人に雇われているというか、データ入力の場合は下請けしてる立場だと、ってことですよね。実際、私自身もお願いしているかたに大したお金をお支払いできてないし。

畔見●でも、すごくひどい会社もあるんですよね。文字入力の単価が1文字0.0…。

廿:そう! 0.いくつならまだしも、0.0いくつ。元請けがそれで、入力者にいくら払ってるのか。すーごく速い人が打ってもせいぜい時給換算100円にしかならないでしょう。

畔見●そんな単価で仕事をする人がいるっていうのが不思議。その何倍も出してるのにメンバーが定着しなくて、悩んでるのに。

廿:うん、以前お願いしたデータ入力の仕事、SOHOWORKネットのMLに文字単価0.45円で募集を出して、計算したら全然お金足りるんで、結局0.75でお支払いしたじゃないですか。0.45でも、そのとんでもないところよりずっと多い金額ですよね。でも3人しか応募がなかったんですよ。

畔見●そうなんですか! 応募者殺到して選に漏れちゃうかなと思ってたんですよ。

廿:畔見さんを落とすわけないじゃないですかー。でも、あれで3人ですからね。春休みだったからかな。そんなにキツい仕事だとは思わなかったんだけど。

畔見●かなり丁寧にやろうと思うぐらい日程がありましたよ(笑)。

これは冗談で、畔見さんは「丁寧じゃない仕事」というのがたぶんできない人だ。
それにしても面白いのは、忙しい人は「たまたまスケジュールが空いてるから」と、高くない仕事でも気さくに受けてくれること。テープ起こしでも「私ごときが、このかたにお願いしちゃっていいのかな、しかもこんな単価で」と恐縮するような人が、たまにやってくれる。スケジュールに空きができたらよそで経験を積む、ついでに多少のお金になるならますますOKという、柔軟でどん欲な姿勢に学びたい。

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経験から成り立つ知識

畔見●ある求人サイトでメンバーを募集したことがあるんです。応募してきた人に、最初は簡単なお仕事頼んだんですよ。それが、ボロボロ。入力をやりたいのに、こんなに文字ミスがあっていいのか!っていう納品物、仕事をなめてるとしか思えない。

廿:それはね、仕事をなめてるっていうより、たぶんポイントがつかめてないんですよ。文字だけを打つ仕事って、普通あんまりないんですよね。見やすい表を作るとかいうことが普通は重視されている。でも、「原稿に書いてある通り+仕様書通りに打ってくれればいい」としか、こっちは説明しようがないでしょう。データ入力っていう仕事のポイントがどこにあるのかは、教えにくい。

畔見●経験のある人だと、そのデータが最終的に何に使われるかを説明すると、ポイントをわかってくれることがあるんですけど、自分がやってるものが何に使われるかを想像もしない人がいる。そうすると、何を説明してもわからない。

廿:うん。テープ起こしのほうでも、口調を再現することが重視されているのか、ある程度文章として整えたほうがいいのかってことに、応用がきかない人はいますね。整える場合は例を挙げて説明するんだけど、例に入ってない言葉はそのままだったりして。

畔見●宛名入力で、郵便番号の下4ケタが8で始まるものは大口事業所の番号ですよね。それを「変換できないから間違いでは?」って言ってくる人が、いまだにいるんですよ。専門職をやるのであれば、専門以外の知識も必要なんだ!って言いたいんです。今、資格、資格になっちゃってるじゃないですか。「MOUSを持ってます」とか。実務の経験がないせいもあるんだけど、経験から成り立つ知識っていうのがないんですよ。

廿:でも、それは最近そうなったわけではなくて、畔見さんがこの業界で生き残ってきた間に、生き残らなかった人が大勢いるはずなんですよ。知識とか応用力とかがなくてね。私は応用力みたいなものはそこそこあるような気がするけど、手の速さとか耐久力とかはイマイチ。誤字もあるような気がする。

畔見●ええっ(笑)。

廿:極端に多くはないと思うけど、入力精度99.95%を維持しているかはビミョー。だって、自力で、単独でそれをクリアできる人ってスタープレーヤーで、そんなに大勢はいないですよ。だからグループワークの場合も、その次ぐらいのレベルの人でどう、ある程度の品質を保つか。

畔見●うん、単独でクリアできるレベルの人が欲しいんだけど、難しい。せめて、続けてやってくれる人、仕様書を読めたり、こっちが一回言うとわかってくれる理解力のある人が欲しいんだけど、今はそれすら危うい状況なんですよね。こんなにいっぱい仕事があるのに、人が定着しない。本当に人材確保が悩みのタネですね。

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報告・連絡は大事、品質はもっと大事

廿:アンケートを入力して集計レポートを作るっていう仕事もしてるんですけど、レポートのフォーマットを使い回してると、計算式を前回から直すのを忘れてトータルが100%になってないとか(笑)。お客さんから電話がかかってきて、ホントに私ってばか!って思いながら…。

畔見●あの、私もそういうタイプです。

廿:本当? 畔見さんってすごく完璧型に思えるじゃないですか。

畔見●えー?

廿:この前お願いしたときだって、きちっとした連絡メールが来て、きちっとした報告メールが来て、完全なデータが納品されてきたでしょう。

畔見●きちっとした完璧型? まあ、そう思っていただければ(笑)。

廿:それはやっぱり長年の習慣から来るものなんですか?

畔見●そうですね。受領連絡とか報告とかをちゃんとやらないと、やっぱり信頼度がそこで落ちちゃうから、納品データにポカをやったら許されなくなっちゃうでしょ。そうやってきちんと要所要所を押さえることによって、納品データに例えば1、2個ミスが発見されても、「いや、大丈夫ですよ」って言ってもらえる環境づくり!みたいな(笑)。

廿:わかった、そこがこの仕事のポイントなんだ(笑)。そこをやらないで、いきなりずさんなデータを送るから相手が怒っちゃう。

畔見●依頼したメンバーさんから途中で全然連絡も質問もないときって、「大丈夫かな、どうしてるんだろう、どうしてるんだろう」って不安に感じますよね。仕上がりが素晴らしいデータでも、またその人にお願いしたいっていう優先順位は下がっちゃいますよね。

廿:そうですよね。「素晴らしいデータに見えるけど、まさか意外なところでポカはないでしょうねえ?」みたいな。私って性格悪いと思いながらね。

いつもの人にいつもの仕事を頼むときは、原稿受領の報告をもらうぐらいでOK。心配しちゃうのはそれ以外の場合だ。(1)いつもと違う人に仕事を頼むとき、(2)いつもの人に違う仕事を頼むとき。

畔見●だけど逆に、連絡をすごくこまめにしてくれて、「しっかりしてる人!」と思ったのに、納品データが漢字ミスだらけだったことありますよ。考えられないんだけど、例えば住所の「第一××ビル」とかの「第」が「弟」で入ってるんです、全部。

廿:「おとうと」?「弟一××ビル」…。

畔見●「だい」で変換して「弟」って、変換候補としてかなり下のほうにあるんですよ。嫌がらせだろうか(笑)。それに普通、「だいいち」で変換すると思うのに。しかもその人の入力は、「富士見ビル」が「不死身ビル」。

廿:つ、強そう…。

原稿チェックをお願いしたとき、「もちろん、ノーミスでなければいくら丁寧でも信頼がなくなってしまうという気持ちで作業はしていますけれど」という追加コメントが届いた。
そうだ、私も追加しておこう。計算式が間違ってOKとは思ってない…そこが違ってたら集計レポートとして意味ないもの。文字ミスよりはるかに罪が重い。

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「PTAうつ」はミスでわかる

廿:畔見さんのところはお子さんはいらっしゃらないんですか。

畔見●いないです、ダンナと2人。でもお願いしてる方はお子さんがいらっしゃる方ばかりだから、自分が子供がいないだけになおさら配慮しなきゃと思ってるんです。それに、昔は自分自身が子供だったわけだから、それなりにわかるとは思ってます。

廿:そうですね、私も実際にやってみて初めてわかったのは、PTAの重苦しさぐらいかな。PTAの役員って、誰も好きでやってはいない。たいがいの人がしぶしぶで、どうかするとクジ引きで無理やり押しつけられたりしてるのに、いざ集まると、子供のためにものすごく頑張らなきゃって雰囲気になっちゃうんですよ。わざわざ仕事を増やしちゃったりしてね。

畔見●不思議な空間なんですねー。子供が小学校に入って役員になったらうつ状態になっちゃう人、いますね。データ入力をお願いしてると、ミスでそれがわかってくる。

廿:怖いな。

畔見●ミスが増えてくると、精神状態が普通じゃないんだなとわかるんですよ。いつもならここでこういう入力じゃないのに、って人がミスをして。「じゃあ、分納することによって納期を長く取りましょうか」って対応して、それでもだめだったら「数量を減らしましょうか」。それでもだめだったら、「ちょっとお休みしますか?」って。役員のお仕事が落ち着いたら、また声をかけたりしてます。

廿:うん、無理にやってもらってもデータが危ないとね…。

ここで私がわけのわからないことを発言しているので、カット。他人の発言をテープ起こししてるときなら「何が言いたいのよ!」とパソコンの前で突っ込むような、わけのわからなさだ。
要約すると、「在宅ワークといえども、仕事をするなら仕事に対してプロ意識を持たなきゃいけないと世間では言われているけれども、子供を持った以上子供の環境への配慮がすべてに優先するって圧力も強くて、母親がそのバランスを取るのはとっても難しくて、PTA役員は一度なったら1年間逃げられないから、仕事のほうをセーブせざるをえないし、そのことにグループリーダーが配慮するのはやっかいだけど避けられない」という…全然要約になってない、相変わらずごちゃごちゃだ。

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おっくうがらずに電話をしなきゃね

畔見●昔私が入力を始めた頃は、例えば「住所、氏名、年齢、性別、希望する賞品」みたいな項目のアンケート入力を、1日1,000件入力して校正かける、それを必死にやれてた時代があるんですよ。

廿:わあ、すごい馬力。

畔見●でも、今それを求めたら絶対無理じゃないですか。1日2時間3時間しか時間取れませんって人がざらなので、本当に納期が短いものは自分でやるしかなくなってきちゃって。

廿:そう、私も納期が短くて仕様が面倒くさいものは、自分でやる。

畔見●この間ご紹介いただいたデータ入力の仕事も、あれだけ長い納期なのに、やるって手を挙げてくれた人があんまりいなかった状態なんです。でも電話してお話ししたら受けてくれたりとか。

廿:電話しなきゃだめなんでしょうね。入力会社に勤めてたときはそうしてたんですよ。「そこをなんとか、あと100件お願いできません? 今すごく仕事が込んでて、どうしても誰かにお願いしないとだめなんですけどぉ」

畔見●そうするとだいたいみんな「あ、じゃあやります」って言ってくれるじゃないですか。募集メールの文章だけだと、本当に来ないんですよね。

廿:誰かやってくれるだろう、みたいな。おかしなもので、頼られるとうれしいんですよ。

畔見●そうかもしれない。電話かかってきて「お願いしますー」と言われたら、私も断れない(笑)。そこがメールと違うところですよね。

廿:だから、相手が遠方だからとか言わないで電話しなきゃだめだと、本当に思うんだけど。私はどうも電話かけるのは苦手。

畔見●私も苦手なんです。どもっちゃって。

廿:「四月堂の山岸と申します。お世話になっております」っていう決まり文句を言うだけで、もつれる。

畔見●そこを言い切ったとしても、そのあとの内容が「あ、う、なんだっけー」に(笑)。

廿:(無言で共感…)

それにしても、1日1,000件こなしてきた畔見さんだから生き残ってきたわけで、昔も「1日2、3時間しかやれない、やりたくない」「時間はあるけど大した量はこなせない」人は多かった。
もちろん入力精度とスピードがあれば2時間でも他人の4時間分打つことは可能だけど、その能力を身につけるには「無理にでも数をこなす」経験が必要だろうと思う。

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