おじぎができない
私はちゃんとしたおじぎができない。おばさん同士が、あれこれの挨拶と一緒に忙しくぺこぺこと頭を下げ合う、ああいう落ち着かないおじぎの仕方になってしまう。
取引先に挨拶や商談に出向いたときとても困るし、肩身の狭い思いをする。
企業でビジネスマナー研修を受けた人たち、特に営業職など外部と接触する人は「おばさん式おじぎ」をしない。
いったん静止してから、腰から上体を折り、またそこで静止し、それから体を起こす。「上体を倒す角度」と「倒してから止めている時間の長さ」は、状況によって決まっている。そのパターンは、秘書検定のテキストなどを読むと載っている。
相手にあれをやられると、あせる。仕事をもらう立場なのはこちらで、こちらが丁寧な作法で臨むべきなのに。
「止まるおじぎ」をしなきゃとそのときは思う。だけど私は家で仕事をしているから、次に外へ出たときにはまたうっかりする。
この仕事を始めるまで、私は外部の人と接触する仕事についたことがなかった。学生時代にコンビニのアルバイトぐらいは経験したが、コンビニでは「営業職式おじぎ」はしない。在宅ワークで「外部の人と接触する仕事を初体験」というのも、考えてみれば笑える話だ。
名刺交換とか敬語を使ってしゃべるとかも最初に比べればましになってきたけど、まだまだ苦手だ。最悪なのはエレベーターで、取引先の人と一緒に乗ると、乗り込む順序も立つ位置もわからなくてまごつく。
よその家庭を訪問したら脱いだ靴を揃えるとか手みやげは玄関でなく部屋に通ってから渡すなどの作法があるように、オフィスではオフィスの作法があるのは当然だ。
身体の動きを伴うものは、本を読むだけではピンと来ない。遅ればせながら、ビジネスマナー講座みたいなものに行かなくちゃと思っている。
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