「文書作成」の絶滅
以前は、入力系の在宅ワークは「テープ起こし」と「文書作成・データ入力」の2つに分類されることが多かった。
ところが現在は「文書作成」が消え「テープ起こし」と「データ入力」になってしまった。レイアウトする入力が外注されなくなったのだ。
1999年~2000年ごろ、私は有価証券報告書のPDF化という仕事のメンバーだった。当時私が仕事をもらっていた入力会社が、この仕事を下請けしたからだ。
それまで印刷物として配布されていた有価証券報告書(上場会社の会計報告書みたいなもの)を、ネット上でも公開することになった。全ての上場会社がPDFファイルを作るのだから入力業界にとってはまさに「特需」で、ほかにもいくつかの会社が受注し、かなりの人数の入力者が関わったはずだ。
有価証券報告書というのはお上に報告する文書で(東京あたりの会社なら「関東財務局長殿 ○年○月○日提出」と書き始める)、どの会社もほぼ同じ形式になっている。
何か実例を…どの会社でもいいけど、例えばファミリーマートの有価証券報告書ページ。「平成15年2月期以前」のファイルを何か開いて見てみてほしい。
会計文書なので、位取りの位置が揃わないなんてことは絶対許されない。ワードで元ファイルを作るときは、カッコや%の位置まで規定通りに揃える。箇条書きや注記部分の左インデント位置も、それぞれ厳格に決まっている。
こういうチームに入って研修を受けるとレイアウトの実力がつく。けれどもこういう仕事は単発で、翌年はもう戻ってこないから、実力をつけても発揮する場所がない。
有価証券報告書は毎年作成するのだが、一度レイアウトを組み上げてしまえば、翌年からは数字や文章を入れ替えるだけで使えるからだ。いちいち外注するまでもない。
今たまに募集を見かけるのは、パワーポイントによる資料作成。このソフトは、使い方は簡単だ。ただし、パワーポイントを使うのは「ビジュアルな資料」を作るときなので、正しければOKの有価証券報告書などとはかなり違う。
それまでの仕事でプレゼンテーションや企画営業に全く縁がなかった人や、デザインに興味のない人などにはむしろ難しい。「任せるからカッコ良く作って」という仕事なのだ。
「指示通りに1ミリの誤差もなく厳密に」というレイアウトの仕事は、ほぼ絶滅している。私が出していた『月刊在宅入力者』も、第1期当時は「ワードレイアウト」の記事を多く掲載していたが、第2期では継続することができなかった。
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